2024年1月22日（月）にGRIPSフォーラムを開催致しました。今回のGRIPSフォーラムでは、Nirupama Rao 氏（元インド外務次官）をお招きし、『今日の世界におけるインド』という演題でご講演いただきました。

概要：

歴史的経験がインドの世界観を形作っている。これに重層的に絡み合っているのが地政学的な考慮と世界をリードする大国になりたいというインドの高まる願望である。インドは、単一の覇権国や単一の超大国が支配する世界秩序とは対照的な、多極化した世界秩序を維持することを信条としている。インドのグローバルなアプローチを条件づけているのは、戦略的自律性、及び国益を促進・保護するために複数のパワーポイントや地域ブロックに関与する行動である。軍事同盟は、権力競争をもつれさせるものとして、これまで厳格に排除されてきた。外交政策の遂行において、近隣諸国が「第一」で何よりも重要である。インドは経済統合、国境保全、連結性の強化、そしてとりわけ地域の安定を求めて、近隣諸国との関係において、複雑ながらも協力的な道を追求してきた。しかし同国は、パキスタンと中国という2つの隣国との関係に問題を抱えており、これらは地域政策に長い影を落とし、インドの国益を脅かす混乱の原因となっている。パキスタンについてはテロ対策に焦点があてられてきたが、後者についてはあらゆる形態のテロとの闘いに絶ゆまぬ支援を構築するためのグローバルな主張と地域・世界レベルのフォーラムでの協調的な取組へと発展している。

近隣諸国以外でもインドは、米国や日本のような姉妹民主主義国と強固で互恵的な関係を模索・構築してきた。これらの国々との関係は今日のインド太平洋政策の基盤を形成しており、とりわけインド太平洋の陸と海の領土境界を侵犯しようとする試みを含め、中国の軍事・経済力が高まるなかで重要性を増している。同時に、インドはグローバル・ガバナンスの改革、及び1945年に創設された第二次世界大戦後の世界秩序に立脚する多国間組織の改革を求めているが、これは既存システムはグローバル・サウスの利益と、そこに住む数十億人の願望と期待の高まりを代表していないと見ているからである。今日、私たちは、大国間で常態化した競争と相違があり、軍事的であれ経済的であれ、こうした大国の独善を開発途上国の人々の生活に押しつけることが、いかに人間の苦しみを悪化させ、世界が取り組むべき優先事項と目標を公正で持続可能な開発や気候変動の影響への対処という目的から遠ざけてしまっているかを目の当たりにしている。

講演者：Nirupama Rao 氏　（元インド外務次官）

講演者略歴：

Nirupama Rao is a former Indian Foreign Service officer. She retired as Foreign
Secretary to the Government of India, being the second woman to occupy the post (2009-2011). She was the first woman spokesperson (2001-02) of the Indian foreign office. She served as India's first woman High Commissioner (Ambassador) to Sri Lanka (2004-2006) and to the People's Republic of China (2006-2009). She was Ambassador of India to the United States from 2011 to 2013. In retirement she has taught at Brown and Columbia Universities. Her book entitled "The Fractured Himalaya: India Tibet China, 1949 to 1962" was published by Penguin India in October 2021.

She is a Global Policy Fellow of the Wilson Center, Washington D.C. She was a Jawaharlal Nehru Fellow from 2015-2016. She is a member of the Advisory Council of the National Institute of Advanced Studies (NIAS), Bangalore, on the Board of the Indian Council for Research in International Economic Relations (ICRIER), and a Council Member of the Indian Institute of Science, Bangalore. She has an honorary degree of Doctor of Letters from Pondicherry University, India. She is also the Vice-Chairman of Tibet House, New Delhi, the Cultural Center of His Holiness the Dalai Lama. 

She is a staunch believer in the power of social media as an advocacy platform for policy and currently has over 1.3 million followers on Twitter.

Ambassador Rao has received several awards recognizing her contributions in public service including the K.P.S Menon Memorial Award, the Sree Chithira Thirunal Award, the Vanitha Ratna Award of the Government of Kerala and the Citizen Extraordinaire Award of Rotary International. She is also the recipient of the Fellowship of Peace Award of the Mahatma Gandhi Memorial Center in Washington D.C.

Ambassador Rao is a Founder-Trustee of The South Asian Symphony Foundation (SASF) (www.symphonyofsouthasia.org) - a not-for-profit Trust which is dedicated to promoting mutual understanding through music in South Asia.

She is currently working on a memoir of her years in China.

GRIPSフォーラムとは：

政策研究大学院大学（GRIPS）は1997年の建学以来、重要な政策課題についての研究・教育を進めてきております。GRIPSフォーラムは、本学がもつ国内外のネットワークを活用し、政府、自治体、学界、産業界などから専門家を招いて多様な課題について議論することを通じ、政策研究の発展や政策コミュニティの形成に寄与することを目的としています。