第3回GRIPS SDGsアワード受賞プロジェクト

 

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インド政府中央水委員会(CWC)の3-Day Advisory Flood Forecast System

 

 

背景:

洪水はインドで最も一般的な自然災害です。ウッタル・プラデーシュ州、ビハール州、アッサム州、グジャラート州、ラージャスターン州、ベンガル州、アンドラ・プラデーシュ州、オリッサ州では、洪水が頻発し問題となっています。ある試算によると、平均で750万ヘクタールの土地が洪水に見舞われ、1,600人が死亡しており、農作物、家屋、公共施設などの被害は180億ルピーを超えるといいます。インド政府は、洪水によりもたらされる甚大な被害に対処するため、堤防、ダム、洪水防止工事のような構造物による対策に加え、洪水予測のような非構造物に基づく対策に大きく頼っています。

 

中央水委員会(CWC)は、インド全国への洪水予測の提供を任務とするインド政府の上級技術組織です。CWCは全国に配置された325箇所の予測局からなる大規模なネットワークを通して、62年にわたって洪水予測を実施してきました。

 

 

プロジェクトの必要性:

CWCは、従来から基準同士を相互に関連付けることによる洪水予測を行っており、長期的にわたって非常に有効に機能してきました。しかし、この技術の統計的性質には、警告時間がインドでは24時間以下に固定され、限られているという大きな欠点があります。しかも、予測が手作業で行われるため時間を要するという問題もあります。このような欠点を克服するため、CWCは2017年に、3-Day Advisory Flood Forecast Systemというシステムを通じた、洪水予測を行うための降雨量に基づく水文モデリング技術を導入しました。このシステムは、費用提供を受けずにCWC内部の職員により開発されたものであり、すでに使用されていた従来のシステムを補完するものです。

 

モデリングに基づく洪水予測技法に移行した主な理由は、警告時間の延長が強く求められていたためです。警告時間の長さは、災害管理担当者やその他の利害関係者による洪水被害最小化のための計画や予防措置の実行に非常に重要となるからです。

 

 

プロジェクトの詳細と成果:

この新しい予測技法により、警告時間が72時間(3日前)まで延長され、国内19の主要な河川流域を対象として全国的に適用されています。このシステムでは1日あたり2,000以上の予測作成が可能で、そのすべてに専用のGISプラットフォームから容易にアクセスできるようになっています。CWCの3-Day Advisory Flood Forecast Systemは最先端の技術に基づいて構築されており、世界中で使用されている他の最新の洪水予測技法と比べて遜色ありません。

 

CWCの3-Day Advisory Flood Forecast Systemは、洪水の危険のある区域からの早期避難と、その地域での洪水被害予防のために不可欠となる事前洪水警告をタイムリーに発することのできるよう設計されています。これは、手作業による基準同士の相互関連付けから、降雨量に基づく自動洪水予測システムへの大規模なアップグレードであるとともに、洪水管理に携わるすべての州および国のプロジェクト推進機関にとって優れたツールでもあります。

 

このシステムは頑強で、耐久性と持続性に優れています。2017年以来、非常に優れた機能を発揮しており、過去5回の出水期に正常に動作しています。今後の保守と継続的な改善の責任については独立した理事会が担っているため、長期的に見ても国にとって大きな役割を果たすと考えられます。

 

謝辞

プロジェクトの次官を務め、今回第3回GRIPS SDGsアワードを受賞したモハマド・ファイズ・サイード氏は、現在インド政府のガンガ洪水管理委員会(GFCC)の長官を務めるリテシュ・カター氏などの主開発チームからの支援を受けました。

このプロジェクトは、委員長、河川管理チームの各メンバー、中央水委員会のチーフエンジニア(FMO)の献身的な支援と奨励がなければ、実現できなかったものです。

 

 

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図 1: インド政府中央水委員会の3-Day Advisory Flood Forecast SystemのWebインターフェイス

 

 

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図 2: 予測システムの方法論の概略

 

 

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図 3: GIS伝播ポータルでの予測サンプル

 

 

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