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2016.5.9

第123回GRIPSフォーラムにてSunil Mani氏による講演「ハイテク・イノベーターvsフルーガル・イノベーター ~中国とインドにおけるイノベーション活動の比較~」が行われました。

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2016年5月9日(月)第123回GRIPSフォーラムにて、Sunil Mani氏 (政策研究大学院大学教授、インド開発研究所教授)による「ハイテク・イノベーターvsフルーガル・イノベーター ~中国とインドにおけるイノベーション活動の比較~」に関する講演が行われました。

 

講演の概要

中国とインドは、世界で最も成長が速い国々のうちの2か国である。両国の経済成長は2008年の世界金融危機の以前も以後も続いたため、「両国が記録した成長は労働力・資本といった要素の投入量増加によるものではなく技術的進歩によるものなのだから持続可能」とする仮説の信憑性が一層高まった。両国における全要素生産性の伸びを示す近年の推算が、この仮説に若干の実証的根拠を与えている。また、両国とも研究開発に相当規模の外国直接投資を受け入れてきている。両国で発生した技術革新に関し体系的な実証的証拠を示す資料は少ないものの、メディアの報告も一定数ある。

 

両国の経済改革 (中国は1979 年 から市場社会主義を、インドは 1991 年から経済の自由化を採用) で公認されているひとつの目標は、企業間の競争を促進することだった。競争が増した可能性のみならず、両国が世界と更に一体化してきたことも見てとれる。ただ、これらいずれの点においても中国はインドより世界との一体化の度合いが強く、実績を持っている。両国の企業はもはやそれぞれの国内のみならず国際的な競争にも関心を有しているため、これらの要因はどれも両国が革新的事業に投資する道を開くかも知れない。

 

改革以降のイノベーションの実績における両国の経済比較

まず第一に、未来の技術超大国との声が高まる両国における革新的事業の性格と範囲が分析できるように、大きな背景が説明する。この背景には 下記のような5 つの要素がある。(i) 中国とインドの経済は世界で最もGDP 成長率が高いが、所得格差も一方で拡大しており、高度成長の恩恵に浴した国民が一握りであったこと。(ii) 中国とインドは資源利用効率において最も高い成長率を示したこと。 (iii)  世界技術革新力ランキングにおいて中国とインドは「イノベーションの質」で 中所得国の中での リーダーであること。 (iv) 両国とも宇宙技術等ハイテク分野で競争を経験したこと。(v) 中国は通信機器、インドはコンピュータ・ソフトウェア・サービスで世界のリーダーになったこと。その次に、中国とインドにおけるイノベーションの証拠として、標準的な投入指標として研究開発費を、成果指標として取得特許件数を示す。これらの指標には限界があるものの、十分長期にわたって両国で入手可能な指標は他にない。

 

両国にイノベーションが促進されたことにより両国では大きな構造変化が発生した。両国のイノベーションの当事者として、政府、企業、大学等が挙げられるが、中国の場合、企業が国家的イノベーションシステム (NSI) の核となり、インドでは核となる前の模索期にある。これは非常に望ましい形の構造変化であり米国・日本・韓国など世界の革新的な国々は同様の構造を持っている。中国企業ははるかに多くの資源を研究開発に充てており、中国企業が国内・国外のいずれにおいても特許取得でより大きな成果を上げている。一方インドでは、米国の特許を取得するための研究開発コストがずっと低く、インドは多国籍企業が研究開発事業を行うのに魅力的な場となった。研究開発の試験サービスの対米国輸出国としては世界最大となっている。

 

その他、両国を比較する8つの角度

  • 政策の重点事項と戦略
  • 国家的イノベーションシステムの改革
  • 企業の役割 – ハイテク製造業への注力
  • 大学の役割
  • 多国籍企業の役割
  • 科学・エンジニアリングにおける人材開発
  • 技術に立脚した起業の奨励
  • ハイテク商品製造国・輸出国としての中国と低コスト革新のハブとしてのインド

 

中国とインドの経済は世界で最も成長が速く、テクノロジーが両国GDPの成長に大きく貢献している。中国は企業を国家的イノベーションシステムの核とすることに成功し、それらの企業はテクノロジー面で躍進した。中国は国家的イノベーションシステムを担う企業の大半を改善・改革することにも成功した。一方でインドは企業を国家的イノベーションシステムの核にしようと試みている最中である。しかし、インドの国家的イノベーションシステム改革の試みはチグハグ、場当たり的、小出しである。またインドは研究開発の方法が効率的なため、言うまでもなく多国籍企業の革新的事業にとって重要な場になった。中国がハイテク製造業に特化する一方で、インドはサービスとフルーガル・イノベーション(低コストの革新的技術を具体化すること)に力を入れている。

 

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2016.5.9

第123回GRIPSフォーラムにてSunil Mani氏による講演「ハイテク・イノベーターvsフルーガル・イノベーター ~中国とインドにおけるイノベーション活動の比較~」が行われました。

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2016年5月9日(月)第123回GRIPSフォーラムにて、Sunil Mani氏 (政策研究大学院大学教授、インド開発研究所教授)による「ハイテク・イノベーターvsフルーガル・イノベーター ~中国とインドにおけるイノベーション活動の比較~」に関する講演が行われました。

 

講演の概要

中国とインドは、世界で最も成長が速い国々のうちの2か国である。両国の経済成長は2008年の世界金融危機の以前も以後も続いたため、「両国が記録した成長は労働力・資本といった要素の投入量増加によるものではなく技術的進歩によるものなのだから持続可能」とする仮説の信憑性が一層高まった。両国における全要素生産性の伸びを示す近年の推算が、この仮説に若干の実証的根拠を与えている。また、両国とも研究開発に相当規模の外国直接投資を受け入れてきている。両国で発生した技術革新に関し体系的な実証的証拠を示す資料は少ないものの、メディアの報告も一定数ある。

 

両国の経済改革 (中国は1979 年 から市場社会主義を、インドは 1991 年から経済の自由化を採用) で公認されているひとつの目標は、企業間の競争を促進することだった。競争が増した可能性のみならず、両国が世界と更に一体化してきたことも見てとれる。ただ、これらいずれの点においても中国はインドより世界との一体化の度合いが強く、実績を持っている。両国の企業はもはやそれぞれの国内のみならず国際的な競争にも関心を有しているため、これらの要因はどれも両国が革新的事業に投資する道を開くかも知れない。

 

改革以降のイノベーションの実績における両国の経済比較

まず第一に、未来の技術超大国との声が高まる両国における革新的事業の性格と範囲が分析できるように、大きな背景が説明する。この背景には 下記のような5 つの要素がある。(i) 中国とインドの経済は世界で最もGDP 成長率が高いが、所得格差も一方で拡大しており、高度成長の恩恵に浴した国民が一握りであったこと。(ii) 中国とインドは資源利用効率において最も高い成長率を示したこと。 (iii)  世界技術革新力ランキングにおいて中国とインドは「イノベーションの質」で 中所得国の中での リーダーであること。 (iv) 両国とも宇宙技術等ハイテク分野で競争を経験したこと。(v) 中国は通信機器、インドはコンピュータ・ソフトウェア・サービスで世界のリーダーになったこと。その次に、中国とインドにおけるイノベーションの証拠として、標準的な投入指標として研究開発費を、成果指標として取得特許件数を示す。これらの指標には限界があるものの、十分長期にわたって両国で入手可能な指標は他にない。

 

両国にイノベーションが促進されたことにより両国では大きな構造変化が発生した。両国のイノベーションの当事者として、政府、企業、大学等が挙げられるが、中国の場合、企業が国家的イノベーションシステム (NSI) の核となり、インドでは核となる前の模索期にある。これは非常に望ましい形の構造変化であり米国・日本・韓国など世界の革新的な国々は同様の構造を持っている。中国企業ははるかに多くの資源を研究開発に充てており、中国企業が国内・国外のいずれにおいても特許取得でより大きな成果を上げている。一方インドでは、米国の特許を取得するための研究開発コストがずっと低く、インドは多国籍企業が研究開発事業を行うのに魅力的な場となった。研究開発の試験サービスの対米国輸出国としては世界最大となっている。

 

その他、両国を比較する8つの角度

  • 政策の重点事項と戦略
  • 国家的イノベーションシステムの改革
  • 企業の役割 – ハイテク製造業への注力
  • 大学の役割
  • 多国籍企業の役割
  • 科学・エンジニアリングにおける人材開発
  • 技術に立脚した起業の奨励
  • ハイテク商品製造国・輸出国としての中国と低コスト革新のハブとしてのインド

 

中国とインドの経済は世界で最も成長が速く、テクノロジーが両国GDPの成長に大きく貢献している。中国は企業を国家的イノベーションシステムの核とすることに成功し、それらの企業はテクノロジー面で躍進した。中国は国家的イノベーションシステムを担う企業の大半を改善・改革することにも成功した。一方でインドは企業を国家的イノベーションシステムの核にしようと試みている最中である。しかし、インドの国家的イノベーションシステム改革の試みはチグハグ、場当たり的、小出しである。またインドは研究開発の方法が効率的なため、言うまでもなく多国籍企業の革新的事業にとって重要な場になった。中国がハイテク製造業に特化する一方で、インドはサービスとフルーガル・イノベーション(低コストの革新的技術を具体化すること)に力を入れている。

 

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