ニュース・イベント

ニュース・イベント

ニュースアーカイブ

2015.12.14

第119回GRIPSフォーラムにて、横浜市長・林文子氏による講演が行われました。

 

取材・文責:企画室広報担当

 

ウォールストリートジャーナル紙「注目すべき世界の女性経営者50人(2004年)」の一人であり、在日米国商工会議所「2014パーソン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた林氏は、世界に認知された日本の市長の一人である。林文子氏は2009年に横浜市初の女性市長となり、2013年に再選。就任前は、経済界で広範なキャリアを持ち、BMW東京㈱代表取締役社長、㈱ダイエー代表取締役会長兼CEO、日産自動車㈱執行役員等を歴任。12月14日、林氏をスピーカーに迎えて「人に寄り添うリーダーシップ ~すべては共感と信頼から~」をテーマに開催されたGRIPSフォーラム。会場は大学関係者を含め多くの人で埋め尽くされた。林氏は、信条である「全ての基本は人」をどのように実行してきたか、また男性中心のトップマネジメントの世界で、女性として直面した現実と葛藤などについて語った。

 

おもてなしの行政サービスを掲げて

横浜市では毎年、区役所の窓口サービス満足度調査を行っているが、林氏が市長に就任して以後、年々向上し、現在95%前後を保持しており、中には99%を達成している区もある。林氏はこの数字を「お客様からのエール」であると捉え、そのエールに応えようと職員を励まし続けてきた。林氏が掲げた「おもてなしの行政サービス」を職員が実践できるよう、氏は区役所のカウンターの中など、職員が実際に働く現場を訪ね、おもてなしを実践してみせ、職員に声をかけ、仕事を褒めた。良いサービスは、サービスをする側である公務員が笑顔で市民を迎え、やりがいを持って対応して初めて提供できるという想いからだ。そうした市長としてのマネジメントの姿勢は、経済界で取締役を務めていたときの実体験に基づいているという。

 

「買い手と売り手の双方が幸せでないと良いサービスは出来ない。」

林氏は㈱ダイエーの経営再建時代に、一つ一つの店舗を回り、売り場の社員達に声をかけてきたという。「どれくらいお勤めなんですか。」「28年ですか、ああ、それはありがとうございます。この町の成長とともに、このお店の成長があるんですね。」林氏は部下がトップに励まされることが勇気になると同時に、自身もまた社員に励まされてきたと言う。また、林氏は、「小売業というのは人と人とが向き合って、一対一で販売する仕事。直ぐそこにお客様がいるから、社員さんは笑顔で頑張っています。経営者が現場を知らずに、制度なんかを作っていてはいけない。」と、現場を第一に考える。

こうしたエピソードは、良いサービスのためには買い手と売り手の双方が幸せであることが必要だという信念に基づいた林氏のマネジメントを表している。そして、市政においても、いくら良い政策を考えても、日頃の行政サービスを通じて市民と行政の双方に生まれる信頼と共感が無ければ、実現しないのだと訴える。

 

「トップは人を幸せにするためにトップになっている。」

自動車販売でトップセールスになり、大企業の経営を再建し、好業績でトップマネジメントを務めてきた輝かしい経歴を見れば、誰しもその秘訣を尋ねたくなる。しかし林氏にとって、そこに奇策は無い。「唯一言えるとしたら、人を大切にしてきた、感謝してきたということです。ここまで私が来たのも、皆さんのおかげ。出会えた人は皆、わが師である。これから恩返しをしていかなければ。そんな気持ちで仕事をして来ました。」林氏は、管理職やリーダーは重荷を背負うこともあるが、部下を幸せにするためにその役目を与えられていることを肝に銘じなければならないと言う。

 

女性は感性のアンテナを広げることで力を発揮

長年トップマネジメントに務めてきた林氏だが、そのキャリアは1986年に男女雇用機会均等法が施行されるおよそ21年前、高校卒業後に始まった。男性と女性の仕事には明確な線が引かれ、男性の補助業務しか任せてもらえなかったという。以来、「全ての基本は人」を信条にその道を切り開いてきたが、男性中心の社会においては、褒めて人を伸ばすといったことが理解されずに苦心してきた。また、マネジメント層に女性がいる状況に、男性側が慣れていない現実も指摘する。林氏によれば、女性は男性に比べて感性のアンテナを広げることが得意であり、男女が双方の強みを発揮することで、組織が活性化し、成果が上がると考えている。

 

林氏は、災害時には真っ先に現場に駆けつけ、チーム一丸となって待機児童ゼロを実現させるなど、懸命に働く公務員たちの姿を目の当たりにし、公務員がどれほど誇り高い仕事であるかを周囲に伝えてきた。会場を訪れたGRIPSの学生の多くは、修了後、公務の道を歩み、様々な組織でリーダーの役目を担うだろう。林文子氏のマネジメントは、部下と上司、市民と行政、国民と政治の間で、共感と信頼が全ての礎となることを教えてくれる。

 

〒106-8677 東京都港区六本木7-22-1

TEL : 03-6439-6000     FAX : 03-6439-6010

PAGE TOP

Print Out

~