同窓会

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ALMO 2024.3

 

藤井 睦子

 

国立大学法人大阪教育大学 副学長・教授

埼玉大学大学院政策科学研究科 国内プログラム(1990年修了)

 

 

 

 

 

 

藤井さんのこれまでのキャリアパスを教えてください。

学生時代は京都大学で教育行政学を学びました。卒業後、1986年に大阪府に就職し、2023年3月の定年退職まで勤めました。埼玉大学大学院政策科学研究科には入庁後3年目に入学し、「物資情報流動構造のエントロピーモデル分析」という修士論文で学術修士を取得しました。

 

大阪府では、人事や財政、教育行政の仕事をしました。退職前の6年間は健康医療部長を務めましたが、最後の3年間は新型コロナ・パンデミック対応に奔走しました。未知のウイルスによる予測できない事態が続き、厳しい局面も多かったですが、公務員の原点ともいえる「府民のいのちを守る」仕事に、多くの関係者と力を合わせて向き合ったことは、忘れがたい経験です。

 

また、就職した年は男女雇用機会均等法・元年でした。当時、女性職員はまだまだマイノリティでしたが、活躍できる機会が拡がっていくプロセスを、自ら経験したことも思い出深いです。

 

藤井さんの大阪府庁退職を見送る多くの同僚

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藤井さんは大阪教育大学の教授です。ずっと学術界でのキャリアを追求したいと考えていましたか?何が一番魅力的ですか?

学術への興味だけに突き動かされたというよりは、若いころから教育への興味を持ち続けていました。大阪教育大学は、西日本最大の教員養成大学です。研究機能だけでなく、新人教員の育成や現役教育者の学習支援など、教育現場を支える重要な役割を担っています。第二のキャリアとして、原点に立ち戻って、教育・人間形成に関わる仕事に携わりたいと考え、大阪教育大学で働くことを決めました。

 

現在の研究対象は何ですか、また興味を持ったきっかけは何ですか?

現在、大阪教育大学では、健康安全教育系の教授を務めています。また、大阪大学の感染症総合教育研究拠点の招へい教授も務めています。

 

この一年間の研究活動としては、新型コロナ・パンデミックの検証研究に携わりました。100年に一度とされるパンデミックというリスク事象に、医療や教育をはじめとする社会システムや組織マネジメント、専門家と行政との連携などが機能したのかを検証し、次のリスクに備えることが大事だと考えています。リスク対応や健康リテラシーに関する自分の経験を少しでも継承したいと思っています。

 

友人とハイキングを楽しんでいる藤井さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、藤井さんは大阪教育大学の副学長も務められていますね。藤井さんの主な役割と責任について教えてください。

副学長として、「未来教育共創戦略」を担当しています。社会経済情勢の変化のスピードが増す中、「令和の日本型学校教育」創造に向け、国をあげて様々な取組が進められています。このうち、教員養成の改革については、全国で4つの「教員養成フラッグシップ大学」が指定されており、大阪教育大学はそのうちの一つとして、先進的な取組を進めています。

 

私はとりわけ、産官学の連携による未来教育の構想に、力を入れ取り組んでいます。この4月には、大阪教育大学の天王寺キャンパスに、産官学のネットワークの拠点として「みらい教育共創館」がオープンします。どのような共創が生まれるか、楽しみです。

 

この立場において、あなたは主な機会と課題は何だと考えていますか、またあなたの使命は何ですか?

これまでの行政経験も生かして、大学、地域の教育委員会、学校現場、教育に関心のある企業とのネットワークを構築していきたいと思っています。

 

未来教育の構想には、教育DXの充実や生成AIの活用、探求型学習など、企業の技術や知見の活用が不可欠です。また、目まぐるしく変わる情勢の中で未来に生きる子どもたちのために、教育の質を上げていくためには、学校現場や学び続ける教員のサポートも重要です。企業の技術力や大学のリソースを活かして、教育課題の解決につながる協働事業や情報発信ができるよう、教育に関わる人たちの交流を、様々なアプローチでデザインしていきたいと思っています。

 

仕事で直面する最大の課題は何ですか?これまでのキャリアで最も興味深かったこと、またはやりがいを感じたことは何ですか?

大学という全く新しいタイプの職場に飛び込みましたので、専門的な知識はもちろん、仕事のすすめ方やICT環境など、学ぶことが本当に多いです。還暦を超えてどれだけ多くのことを吸収できるかが、現下の最大の課題です。

 

自分のキャリアの中で最も記憶に残る仕事は、やはり新型コロナ対応です。追い込まれても、くじけずに、使命感を持って難題に共に立ち向かった人が、医療関係者や新型コロナ対応チーム員たちに数多くいます。コロナ対応については、達成感や躍動感に彩られた記憶ではなく、どちらかと言えば苦しく胸が詰まるような記憶ですが、苦境の中での連帯感や判断を忘れずにいたいと思います。

 

素敵なご家族と藤井さん。ご主人もGRIPSの卒業生です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GRIPS/GSPS に興味を持ったきっかけは何ですか? 勉強から得た最も重要なことは何ですか?
またGRIPS/GSPSで過ごした時間や研究は、その後どのような影響を及ぼしていますか?

大阪府に入庁して2年経った頃、「もっと知識を身につける必要がある」という思いから、GRIPS/GSPSでさらに勉強することになりました。私は、どちらかというと合理的な考えの人間で、「行政の曖昧模糊を科学する」という政策科学の考え方が性に合いました。修士論文については、幸運なことに目当てとする貴重なデータを入手し、大山先生のご指導のもとで、日本OR学会の学生論文賞をいただいたことが思い出深いです。

 

卒業後の配属では、残念ながらGSPSの学びを活かす機会があまりなかったのですが、30年経って新型コロナ対応で膨大なデータを読む際に、GSPSで勉強した統計学が役に立ちました。また、大阪府退職後、教授職に就けたのも、修士を取得していたことも大きいと思います。

 

卒業以来、GRIPS と何らかの関わりがありましたか?

若いころはGSPS時代に入会したOR学会に所属していましたが、専門的な情報とのつながりは終了後10年程経った頃に途切れてしまいました。また、GRIPS同窓会で話題提供としてお話しする機会もいただきましたが、お世話になった大山先生や横道先生をはじめ先生方や、同窓の方々とは、年に一度、近況のご報告をするくらいで、なかなかお会いする機会も持てずにいます。

 

仕事と残りの生活のバランスをどのように保っていますか? 仕事以外で一番好きなことは何ですか?

仕事人間ですが、週末は、からだを動かすか、楽しいイベントに参加するかし、脳内をすっきりさせるよう、心がけています。40代後半からマラソンをはじめ、10回フルマラソンを走りました。コロナ禍で中断しましたが、今また少しずつ走り出しています。年齢を考えて、山歩きにもシフトしているところです。この冬は、雪山用のアイゼンも買いました。

 

雨の中マラソンを走る藤井さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GRIPS/GSPSでの一番の思い出は何でしょうか?

1年目に、国際コースと国内コースの合同で、日光江戸村への一日遠足に行きました。私は運営に携わったのですが、バスの借り上げ、コースの選定、食事のハラール対応など、ワイワイ企画したのが楽しかったです。色んなイベントを通じて、学生同士の距離も縮んだ記憶があります。

 

GRIPS への進学を検討している人へのアドバイスはありますか?

社会人になってから、様々な経歴を持っている人たちと共にじっくり学ぶ機会はなかなか得られません。学生時代と比べて、自らの問題意識も具体化しているので、深い学びも生まれます。長いキャリアのなかで、私には大きなプラスになりました。

 

今後どのようにGRIPSとの関係を維持していきたいですか?卒業生として GRIPS に期待することは何ですか? GRIPSの修了生ネットワークをより一層活用していくために、何かご意見はありますか?

大阪にどっしり根を下ろしてるので、GRIPSの集まりにも参加できずにいました。このたび、微力ですが、同窓会の副会長をさせていただくことになりましたので、これを機に、関西の卒業生や同期の卒業生で集まる機会をつくれたらと思っています。

 

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