同窓会

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ALMO 2016.9

Ranjit01Ranjit Kumar(インド)

インド財務省 中央物品税情報総局 局長補

Public Finance Program (2012年修了)

 

 

 

 

 

 

 

 

1995年にインド工科大学カーンプル校で電気工学の学士号を取得後、インド歳入局(関税および中央物品税)に入局し官僚になる。租税管理者として複数の職務を歴任後、2011年に政策研究大学院大学のPublic Finance Programに入学。インドに帰国後、中央物品税情報総局で局長補の職務を遂行する傍ら、2017年に導入される物品・サービス税の構造と法案の設計を担うチームのメンバーとなる。2016年の共和国記念日に、特に顕著な勤務実績が認められ、税務官にとって最高の賞であるPresidential Awardを授与される。

 

 

‐ご自身の専門分野とその分野に従事するに至った経緯を教えてください。

インド工科大学カーンプル校で電気工学の学士号を取得後、インド歳入局(関税および中央物品税)に入局し、官僚になりました。それ以前は、1994年に政策調査センター(Center for Policy Research)で、インドを2020年までに先進国にする政策イニシアティブを提案する「Vision 2020」という名のプロジェクトに携わり、人々のより良い未来を実現する政策策定という領域に出会いました。

 

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長崎にて密輸入取締りのための監視艇乗船体験

租税管理者という公人としての人生は、東インドの都市、コルカタで部の責任者を務めたのが始まりでした。コルカタには、さまざまな職務の税務職員が100名以上おり、税を収める産業やビジネス企業は数千を超えていました。私の職務は、担当の管轄地域で法律と政策を履行し、中央物品税及びサービス税を徴収することでした。当時インドは、税改革を含む大規模な経済改革を進めていました。私は、査定に基づく税制度から、自己申告と監査に基づく税制度への転換に関わる機会を得ました。その業務に取り組む中で、政策調査センターの支援を受け、新たな制度の設計と導入の方法について学びました。そこで学んだ内容は、その後、財務省において、知的財産権侵害品対策の法的枠組みを考案し、経済特別区の政策策定と法律制定に貢献する際に大きく役立ちました。

 

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日本税関との共同研修

私が法律を学び、学士号を取得したのは、法律と法学の知識が、政策の考案とその履行手法に不可欠であるからです。法律を学ぶことで、社会的意識と政治的意識は時間とともに進化し、法と法の順守がいかに社会の方向性を決定付けるかを発見する機会となりました。さらに、税政策のより細かい意味合いと人々に対する影響、とりわけ影響を受けやすい人々や、国の支援次第で生き残ることができる人々への影響を把握し、十分に理解することができました。金融危機のニュースが突然報じられたのは、政策策定と関税法案策定の経験を生かしてデリーの税関で働いていたときでした。危機の発端は米国でしたが、全世界がその余波を受けることは避けられませんでした。インドのような発展途上国の成長構想が、別の方向に向かうことが懸念されました。インドの特定の産業やビジネス部門は、インド経済が金融危機の余波による悪影響を受けないよう、規制によってインド経済を世界経済と切り離すことを提案しました。そのような要望が増える中で、先進国と世界の著名な経済学者たちは、中国やインドなどの発展途上国の経済が、このような困難な状況でも成長し、世界経済を不況から回復させることができるという見方を示していました。

 

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インド政府は、見解をバランスよく取り入れ、WTOの提供する貿易保護手段を用いることを決定しました。そして私は、セーフガード総局に入局し、セーフガードの調査を行うよう命じられました。WTOのセーフガード協定および条項の枠組みの範囲内で、急増する輸入品の流入から国内産業を保護することが目的です。我々は難題に立ち向かい、多数のセーフガード調査を実施し、WTOのメンバーとなりました。そして、最多の調査を実施し、国内産業を保護するためのセーフガード税を課しました。我々の賢明なアプローチと正当な措置は、貿易紛争としてWTOに報告される紛争を未然に防ぎ、私たちは国内産業を保護する一方で、貿易保護というこのような苦しい対策が最善で一時的なものに留まるようにしました。

 

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数年後、世界中の指導者や人々による協調的な取組みにより、世界経済は不況の悲運から抜け出し始めました。そうした協調的な行動によって目に見える結果を生んだことで、頑固な交渉団には惨事と見なされている貿易交渉であるドーハ開発ラウンドを締結させるよう、指導者たちを促すことができました。共通の利益のために共通点に到達する可能性は見えているようでした。インドの貿易円滑化に関する見解の正式化を担うグループの重要なメンバーである関税局は、交渉を急速に展開させるべく、チームを再編しました。私は、発展途上国の見解をWTOに対して効果的に示すためのチームを直ちに編成し、インド税関がWCOでより大きく貢献するよう依頼されました。私たちのチームは、見解と交渉戦略を準備し、ジュネーヴで交渉に臨みました。

 

国際的な任務が増えたことで、財政学と国際関係を学びたいという強い思いが高まりました。私は、GRIPSとWCOが提供する教育プログラムを偶然見つけ、GRIPSで学習する機会を得ました。私は、お台場にある東京湾に面した東京国際交流館(TIEC)の快適な学生寮に滞在しながら、六本木のGRIPSのキャンパスで1年間の楽しい学生生活を過ごしました。東京での学生生活は、官僚としての10年間の生活から離れ、活力を養う有り難い休息でした。国際的に高く評価されている博学な教授陣と、世界各地から留学してきた最高の学友から学び、知識を増やしたことで自信を高め、インドに戻りました。

 

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3,000名を超えるさまざまな階級の税務職員をカバーする制度運営と管理部隊をマネジメントするよう任せられました。私は小さな改善によって管理部隊に貢献し、一方州政府と中央政府は、物品・サービス税の導入による間接税構造の大規模改革を行うことで幅広い合意に達し、構造設計と物品・サービス税法案の策定を担うチームが編成されました。

 

私は、確かな能力を持つ何人かの上級職員とともに、そのチームのメンバーに選出されました。構造設計は2013年に精力的に開始され、複数の交渉を経て、満場一致で合意に至りました。物品・サービス税の設計完了後、2016年半ばに、物品・サービス税法案は意見を求めるために公開されました。

 

チームの大半のメンバーと同様に、私は既存の税構造を管理しながら、新たな税構造に取り組む必要がありました。2015年にニューデリーの中央物品税情報総局の局長補の職務を任せられ、2016年のインド共和国記念日には、特に顕著な勤務実績が認められ、税務官にとって最高の賞であるPresidential Awardを授与されました。

 

現在、インド財務省中央物品税情報総局長補を務めていらっしゃいますが、主な責務について詳しくお聞かせください。

中央物品税情報総局(DGCEI)は、中央間接税の脱税を調査する最高機関です。脱税の情報を収集し、照合する責任を担い、脱税事例を調査する権限も持ちます。DGCEIの局長補としての主な責務は、情報の収集と脱税事例の調査を監視することです。また、法律や通関手続における制度上の不備を発見するための調査を実施し、コンプライアンスを徹底するための脱法行為防止策を政府に提言します。インドは新たな税制度に移行中であり、私は、新税法の下で実施されるこうした調査のプロセスを、設計する仕事も行います。

 

現在の立場から見て、今後5~10年におけるインドの展望と課題についてどのようにお考えですか。

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十分な空間が設けられている高速監視艇

現在インドの税収集制度は岐路にあり、インド議会は全会一致で、新たな税制度である統一物品・サービス税の導入に賛成票を投じました。これにより、州の境界線に存在する貿易の障壁が取り除かれ、インド全土が共同市場になります。より優れた税構造を持つ物品・サービス税は、より効率的で優れた税管理を実現する機会であり、税の物品・サービス税比が向上することが見込まれます。ただし、新たな税制度の導入は、機会と課題の両方をもたらします。物品・サービス税を導入した各国は、そのどちらも経験しています。ですから、今後数年間が重要です。導入により、人的資源はそのままに変化に対処し、数十億のトランザクションを処理する能力を持つITシステムを管理し、マンマシン対話を管理し、20以上の言語で法的枠組みを扱うといった課題に直面するでしょう。このような膨大な課題に対して、系統立った方法で、計画的かつ協力的に対処することが求められます。現行の徴収部門を含むインドの組織は、そのような課題に対処できる堅牢性と弾力性を備えています。私たちがすべての課題に対処できること、そして物品・サービス税によって、インドが先進国の仲間入りを果たす新たな好機がもたらされることを確信しています。

 

直面している課題はありますか。また、印象に残っている仕事や、やりがいについてお聞かせください。

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東京お台場にあるTIECにてバーベキュー

良い税管理は、相互の信頼に基づいて機能します。長い間、政策設計に携わってきた私の意志決定プロセスも、信頼に基づいています。しかしながら、情報機関と納税者は、歴史的に見て、相互不信の関係にありました。情報機関における私の現在の職務は、円滑化と法令施行のバランス、つまり信頼と不信のバランスを制御するという大きな課題を抱えています。

 

私はさまざまな分野で、興味深く、重要で、やりがいのある機会に数多く恵まれたことを、幸運に感じます。しかしながら、これまでで最も興味深かった職務は、WTOのドーハ開発ラウンドの交渉団で貿易円滑化の草案に取り組んだことでした。草案に取り組む間、さまざまな問題で多様な異なる見解に遭遇しました。また、たとえ些細な貿易手順でも、異なる視点が反映されており、国際貿易に異なる要素をもたらすことにも気付きました。私は、いかに交渉が国益を生み出し、いかにさまざまな利益が集まり、関係者全員の共通の利益となるかを学びました。

 

どのような経緯で本学を志願されたのでしょうか。本学での経験は、今のご自身の活動にどのように役立っていますか。

私が政策策定に携わってきた経験と、世界中により有効で統一された貿易円滑化体制をもたらした国際貿易交渉での直近の経験によって、政策策定の理論と技術を体系的に学びたいと思うようになりました。GRIPSは正しい選択でした。GRIPSは政策研究を専門としており、また日本は、自然災害、戦争による荒廃、乏しい天然資源をいかに克服し、経済大国に留まることができるかを証明している最適な例だからです。私は今、選択が正しかったこと、そしてより有効な政策と管理規定を提供する能力を身に付けたことを実感しています。

 

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仕事とプライベートのバランスはどのように維持していますか?

公職に身を置いている間は、仕事と私生活を分けることは非常に難しいと考えています。ただし、仕事と私生活の調和を作り出すことが、堅実な実績を収める鍵となるので、家族、友人、趣味、健康のために時間を取るよう努めています。空いた時間には、読書をするのが一番好きです。

 

本学での懐かしい思い出はありますか。

日本で過ごした1年間は、私の人生における最高の時間の1つです。大切な思い出がたくさんあり、時折楽しかった日々を思い出します。TIECの学生寮で過ごした時間、特に夜遅くまでのパーティーや、夜に友人と海辺を歩き、レインボーブリッジを眺めたことを懐かしく思い出します。船の科学館から汐留までの電車移動は、本当に楽しい経験でしたので、また東京を訪れ、電車に乗りたいと思います。

 

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日本食が好きになり、今は味噌汁、巻き寿司、ラーメン、天ぷらが大好きです。八田教授が主催した夕食会で食べた刺身が最も恋しいです。

 

未来のGRIPS学生達へアドバイスをお願いします。

GRIPSで学習する機会を得たら、その機会をしっかりと掴み取る必要があります。GRIPSでの1年間の研究を通して、同僚を数年分リードすることができます。能率、仕事のスタイル、社会貢献能力は、目に見えて向上するでしょう。

 

‐本学とのつながりをどのように維持していきたいですか。同窓会活動強化についてなにか期待や提案はありますか。

GRIPSは、世界トップクラスの政策研究教育機関であり、アジアの一流の学校です。アジアの学校であるGRIPSが、アジアで貧困を撲滅し、平和を推進するための政策イニシアティブに率先して寄与する役割を担うことを期待しています。GRIPSの同窓生は、アジアをより住みやすく繁栄した場所にするために、力を合わせて貢献すべきだと考えます。

 

 

 

 

 

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