同窓会

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ALMO 2008.10

Tashi WangmoTashi Wangmo, (ブータン)

 

ブータン国家評議会(上院)議員
Public Policy Program (’02/’03)

 

※インタビュー:2008年10月

 

 

 

 

 

 

現在、ブータン国家評議会(上院)を務める。5名の優れた主要議員の一人として国王から任命を受ける(ブータン議会の上院は、近年実施されたブータン初の選挙において各県から1名ずつ選出された20名の代表者によって構成されている)。1999年に情報通信省の民間航空課でアシスタントエンジニアとして働き始めたのがキャリアの出発点である。その後、国内の全ての職業教育訓練を監督する国立技術研究機関(NTTA)の企画間を務める。企画官としての経験を買われ、その後ブータン国王政府労働省の政策企画課長に就任。雇用、労働行政、職業能力開発に関連する政策やプログラムの策定及び実施調整を担当する。その後、国家評議会へ参入し、現在に至る。1997年にオーストラリアのウーロンゴン大学で機械工学の学士号を、2003年にGRIPSでPublic Policyの修士号を取得。

 

 

 「民主的に選出されたブータン政府のもとで初の議員になることの責任、それは私たちが行うこと全てが未来の後継者にとっての先例になることです。」

 

- 専門分野やその分野に従事するに至った経緯を教えてください。

私の専門は計画立案および政策策定で、この分野にはこれまで8年間携わってきました。私は1999年にブータンの情報通信省のアシスタントエンジニアとして働き始めたのですが、そこではエンジニアとしてできることが限られていたため、別の仕事を探し始めました。幸いにも、この頃新しく設立された国立技術研修機関(NTTA)が技術的な知識・経験を持つ人材を募集していたので、私は2000年から企画官としてNTTAで働くことになりました。「戦略的計画」という概念に初めて触れたのがこの時で、以来職務として計画立案に携わるようになっています。NTTAの在任期間中は技術・職業教育および訓練に関連する政策やプログラムの策定を主に担当しました。

 

始まりはブータン情報通信省のアシスタントエンジニア。6年後、労働省政策企画課の発足を一任される。

 

2003年6月、ブータンの新たな労働省の発足とともに、NTTAはこの新労働省の傘下に組み込まれることになりました。これにともなって政策企画課の設立が必要となったのですが、この時に私の企画官としての経験が買われ、2004年初めに政策企画課の発足を任されることになりました。これ以降、職務が更に広がり、政策策定にも関わるようになりました。

 

- 職務で直面している最大の課題と、これまでのキャリアにおける最大の魅力、もしくは、やりがいについて教えてください。

数名の難しい上司と折り合いをつけなければならなかったことを除けば、仕事において大きな困難に直面したことは今のところありません。今まで一緒に働いてきた人々は常に協力的だったので、私は恵まれた環境で働いてきたと言えると思います。私のこれまでのキャリアにおける最も貴重な経験のひとつは、様々な個性を持つ人々とともに働けたこと、そして彼らをありのままに受け入れられるようになったことです。この経験を通して、私はより忍耐強く、理解力のある人間になれたのではないかと思っています。

 

-労働省に従事してきた中で、最も誇りに思っている成果は何でしょうか?

2004年2月、私は労働省政策企画課の発足の一切を任されることになりました。既存のシステムも人材も全くない状況で新たな課のシステムをゼロから作り上げた数カ月の間、私はたった一人で辛抱強くコツコツと前に進み続けました。その結果、その年の終わりには物事が落ち着くべき所に落ち着き始め、現在、政策企画課はしっかりと自立した課になっています。課の発足時には苦労しましたが、当時の苦労を今はとても誇りに思っています。

 

-GRIPSでの経験はあなたのキャリアにどのように役立ちましたか?

GRIPSでの学びを通して公共政策の本質を理解することができました。またキャリア面でも全く新しい世界を私に見せてくれ、いつか公共政策アナリストになれたら、と思うようになりました。

 

-ブータンではこの度国家評議会(上院)と国民議会(下院)の史上初の選挙が行われました。この民主主義への歴史的転換についてどう感じていますか?

今回の史上初の選挙は、個人的にとても感慨深い節目になりました。2008年はブータンにおける議会制民主主義政府の到来を告げた年であると言えます。ですから、今日のすべてのブータン国民が、活気ある民主主義をこの先も継続させるための種をまく責任を担っていると考えています。

 

ブータン国家の若きリーダーとして国王から任命を受ける

Tashi Wangmo

 

-この度、Wangmoさんは国家評議会(上院)の五名の重要なメンバーの一人としてブータン国王から任命を受けたとのことで、おめでとうございます。ブータン国家の若きリーダーの一人となったことをきっと誇らしく思われていることでしょう。今後、ブータンの未来にどのように貢献していきたいとお考えですか?

ありがとうございます。国王陛下から任命を受けた五名の一人になれたことは、大変名誉なことだと感じています。正直に言うと、任命を受けたことにはとても驚きました。これまで努力はしてきましたが、それがこのような大きな形で返ってくるとは夢にも思っていなかったからです。今回の任命は、私の人生において最も忘れられない出来事になることでしょう。民主的に選出された政府のもとでの初の議員になるということは、私たちが今行うことはすべて未来の後継者たちにとっての先例になるということです。このことを考えると、これまでよりもさらに大きな責任が自分の肩にのしかかっていると感じます。例えるならば、議会制民主主義は国の大切な鳥であり、国家評議会(上院)と国民議会(下院)はその鳥の二つの翼です。ですから、この鳥が空高く羽ばたき目的地に安全に到着するには、両方の翼のバランスが取れていなければなりません。したがって、国家評議会(上院)をその発足と同時に直ちに強化することが極めて重要になります。私は議員の一人として、国家評議会(上院)の機能の強化のみならず、最終的には、未来のブータンにとって最も望ましい形での議会制民主主義の実現に貢献したいと考えています。

 

ブータンの人々の幸福の最大化のために

 

-現在の立場から見てブータンの今後5年、10年先の主な挑戦や課題についてどう考えますか?

ブータンは社会経済的側面において大きな成長を遂げてきましたが、まだまだ長い道のりを歩いていかなければなりません。私の知る限りでは、ブータンの究極の目標は人々の幸福を最大化することです。したがって、この目標を達成するための方法を探し出すことが常に私たちの課題ではないかと考えます。

 

-ブータンは「国民総生産(GNP)より、国民総幸福(GNH)を」という考え方を国の発展の指針としています。この「国民総幸福(GNH)」という考え方は政策立案にどのように影響していると考えますか?また、GNHは世間一般の人々にとってどのような影響もしくは意味を持つのでしょうか。

 

Tashi WangmoGNHという考え方は、「幸福は物質的な富よりも重要である」と考えたブータンの第四代国王によって広められました。ブータンにおける全ての開発政策や方針がこの考え方に則して進められています。GNH指標を作成するプロジェクトが現在進行しており、完成した際にはこの指標が人々の幸福を測る基準として役立つことでしょう。

一般的に言って、ブータン国民は平和を愛し、物質的な豊かさはあまり求めません。世間一般の人々、特に農村地域に住む人々は「幸福」であることを信条に生きています。ですから、GNHは人々の生活に大きな意味を持つだけではなく、彼らが望むものを真に反映した考え方でもあると言えます。

 

-現在GRIPSで学んでいる学生にアドバイスをお願いします。

GRIPSに学びにくる人々は少なくとも中堅レベルの国家公務員である方がほとんどですから、私からみなさんに「アドバイス」するようなことはありません。そのかわり、1997年にオーストラリアのシドニーで行われた「希望を維持して」という講演の中で、ダライ・ラマ14世が述べられた素晴らしい言葉をここで共有したいと思います。「私たちは、頭脳と心の両方を持たなければなりません。なぜなら、思いやりをともなわない知性は非常に危険だからです。」以来ずっと、この言葉は私の心の中に残り、何をする時にも私はこの言葉を指針にしています。また、世界の一部地域においての殺傷や苦難を絶えず目の当たりにする現代においては特に、このダライ・ラマ14世の言葉が大きな意味を持つのではないかと感じています。みなさんのGRIPSでのご成功と幸運をお祈りします。東京での生活をどうぞ楽しんで下さい。

 

 

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