ニュース・イベント

ニュース・イベント

ニュースアーカイブ

2016.2.18

世界銀行セミナー「世界経済見通し(GEP):低成長の余波」

kosehonbunphoto

 

 

(取材・文責:企画室広報担当)

昨今の世界経済の健康状態は良好だろうか。この先待ち受ける主要リスク要因、政策上の主な課題は何であろうか。2月18日(木)、『世界経済見通し(GEP)』報告書をはじめ世界銀行の経済見通しの準備作成を統括するアイハン・コーゼ開発経済総局(DEC)開発見通し局長を本学に迎え、世界経済の見通しに関するセミナーが開催された。

 

2015年のビジネス界のニュースは、常に悲観的で不安に満ちていた。その状況は、中国経済の低迷、石油価格の暴落、商品先物取引及び金融市場の混乱など、多くの負の要素が折り重なっていたように思えるが、コーゼ氏によれば、今年2016年の世界経済は不況を回避できるはずだという。例えば、近年の環太平洋戦略的経済連携協定におけるパートナーシップ合意などによって世界貿易の活性化が期待できるが、そうした要素が徐々に経済成長にプラスの影響を与え始めているとコーゼ氏は見ている。

 

世界銀行の旗艦報告書「世界経済見通し(Global Economic Prospects)」は、1960年以降毎年出版されており、コーゼ氏は2016年1月版の出版を統括した。報告書によると、主要新興市場の低成長は2016年の世界経済にとって足かせとなるが、先進国が成長を加速させることから、経済成長率は2015年の2.4%から2.9%へと緩やかに向上するという。一方、途上国の成長率は、世界金融危機後に最低水準となった2015年の4.3%を上回る4.8%に向上すると予測されている。また、中国の経済成長は一段と鈍化し、ロシアやブラジルで景気低迷が続くと考えられており、一方、インドが牽引する南アジア地域の見通しは明るいという。

 

経済の見通しは厳密な科学に基づくものではない。コーゼ氏は世界経済成長の芽を破壊しうる、いくつかのリスク要因について説明した。例えば、主要新興市場の大幅な景気後退、国の脆弱性や地政学的緊張の高まり等に起因する金融市場の混乱など、その影響は世界的に波及し、人々が再び貧困に陥る脅威となりうるリスクだ。

 

コーゼ氏はまた、中国が鍵を握っていると考える。中国の負債は急速にかつ膨大に累積しており、経済が成長過程にあれば、必ずしも負債は問題にはならないが、中国の経済成長は低迷している。前例をみても、こういった経済シナリオでは望ましい結果になるとは言いがたく、中国は今後自力で、不況などを招かずに経済を安定させることが出来るかどうかが問題になっている。

 

これまでは、グローバルレベルでの経済波及効果について考えるとき、アメリカ等の先進国からの波及効果に注目していたが、今後は、これまで世界経済成長を促進させてきた新興市場による波及効果についてよく考える必要がある。だからこそ、特に新興国における構造改革が重要な影響力を持つ。経済ガバナンス、労働市場機能、効果的な資本配分などを改善することで、生産性の向上と人口動態上の課題克服に効果があるとコーゼ氏は述べる。

 

コーゼ氏は、昨今の世界経済を表現した風刺画を用いて、セミナーを締めくくった。風刺画には、箱いっぱいの卵で出来た道が描かれ、経済回復に向かう道のりを表現している。よりよい将来像を達成できる見込みはあるが、その足元は非常にもろく壊れやすい、というメッセージだ。

 

〒106-8677 東京都港区六本木7-22-1

TEL : 03-6439-6000     FAX : 03-6439-6010

PAGE TOP

Print Out

~