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A Quantitative Investigation of The Japanese Government Subsidies Policy for The Private Universities

博士論文、要旨、審査要結果

学位取得者氏名: Anwar Sanusi
学位名: 博士(政策研究)
授与年月日: 2007年11月28日
論文名: A Quantitative Investigation of The Japanese Government Subsidies Policy for The Private Universities
主査: 大山達雄教授
論文審査委員: 今野雅裕教授
中村玲子教授
刀根薫教授
潮木守一教授(桜美林大学大学院国際学研究科)

I.論文内容要旨
 
 わが国の私立大学が高等教育における教育、研究両面において少なからぬ貢献をし、国家の発展に寄与する人材を育成してきたことは事実である。わが国の高等教育において私立大学が急激な拡大を示したのは1960年代であって、それ以来、高等教育における大半を担っているのが私立大学であったといっても過言ではない。2005年の文部科学省のデータによると、わが国の私立大学は学校数で542校となり全体の75%を占め、2百万人を超える学生がこれらの私立大学で学んでいるというのが現状である。
 このような状況の中でわが国の私立大学の財政のかなりの部分が公的資金である私学助成によってまかなわれていることも事実である。本研究では、政府による私学助成を対象として、学術的、財政的、経営的側面といった各種側面から眺めることによって定量的分析を行うことを目的としている。
 具体的研究課題として下記のような項目を設定する
(1) わが国の学校教育関連予算の推移(1955-2002)を、初等、中等、高等教育といったレベル、そして公立、私立といった形態をもとに定量的動態分析を行う。
(2) 政府の私学助成政策の歴史的推移を分析し、影響要因分析、私学経営へのインパクト分析を行う。さらには相関分析、順位分析、多重回帰分析、等の手法を用いて私立大学別の私学助成受領額の決定要因を分析する。
(3) わが国の高等教育において大学院教育を対象として、学術的成果を評価する方法を提起し、検証する。特に政策研究関連大学院に対してDEA手法を適用することを試みる。
  上記課題(1)については、特に1985年頃までは学校教育関連予算の3/4が初等中等教育に用いられており、わが国の高等教育関連予算は増加傾向にはあ るものの、国際的水準から見ても未だかなり低いことが指摘されている。またわが国の私学助成政策が私立大学の財政に寄与し、私立大学と国立大学の間の授業料の格差縮小にも貢献しているものの私立大学が収入面で現在でもかなり授業料収入に依存していることが指摘されている。
 上記課題(2)について は、重回帰分析に基づく決定要因分析によって私学助成の一般部分は教員数、特別部分は学生数が最も大きな決定要因となっていることが示されている。このことは、特別部分が研究成果に基づくという本来の目的を達成していることを示唆していると述べられている。また順位分析に基づく数理モデルによって、私学助成の受領額が上位10%程度では少数の大学がかなり固定化し、2000年時点での”支配力”が1975年当時と比較してかなり強まっていることが定量的、 実証的に示されている。
 上記課題(3)については、わが国の大学院教育における学術的成果を評価する方法が、3種類の指標を用いて示される。こ れらの指標はそれぞれ教育一般指標、研究指導指標、講義提供指標と呼ばれているが、それぞれの指標は、学生定員数、在籍学生数、必要取得単位数、研究指導 時間数、論文作成所要時間数、講義数などを用いて定められ、わが国の政策研究関連大学院の実際のデータを用いて検証が行われている。全般的に国立大学が私立大学と比較して良好な状況にあること、特定のいくつかの国立大学が多くの側面で良い結果を得ていることなどが指摘されている。またDEAを用いた分析も 行われ、DMUとしてのいくつかの大学院の効率性評価分析結果が示されている。
 
II 審査要旨
 
  本論文の最終報告に引き続き、平成19年3月22日(木)午後4時30分から審査委員会が開催された。審査委員は大山達雄教授(主査)、今野雅裕教授(副 査)、中村玲子教授(副査)、刀根薫教授(副査)、潮木守一教授(桜美林大学)の5名であったが、 本論文について以下のような意見が出された。
(1) 政府予算システムと高等教育政策を分析した部分では、影響要因分析の意義、将来予測の裏付けなど数値データの分析に加えて政策レベルの議論をもう少し入れてはどうか。
(2) わが国の私学助成制度については、より詳細な歴史的背景を含めた説明があるとよい。数量分析については、時系列的順位変動分析、一般助成と特別助成に関する変動状況の分析など興味ある結果が得られている。
(3) 私学助成への影響要因の分析に重回帰分析手法を用いた部分では、私立大学を4タイプに分類した上で各分類の特徴が一般、特別の各助成に対して明らかにされているのは興味深いが、手法としての斬新さ、特徴、結果分析の意義、といった点でもう少し議論を深めてほしい。
(4) AHPの適用方法については、意義、概要説明、対象大学の選択方法、結果の解釈といった点でかなり改善の必要があるので、本適用のオリジナリティを強調することを含めて再検討してほしい。さらに大学院教育プログラムの評価について、本論文で提起されている3つの指標に基づく分析に加えてDEA手法の適用に基づく評価を実施することが必要である。
 上記のコメントに基づき、著者は本論文に大幅な修正を加えた。(1) 、(2)、 (3)については各章における詳細分析を加えたが、特に(4)については、第7章として新たにDEA手法に基づく大学院教育プログラムの評価を加えたことに よって、大学院評価の方法論の提起とともに実証データを用いた分析が強化され、第6章と合わせて実際的応用がさらに強化、発展することが期待される。本研究の成果としては、第1、2、3章部分が “Statistical data analysis for investigating Japanese government subsidy policy for private universities” として英国の学術雑誌Journal of Higher Educationに採択され公表されている(2007年)。また第6章については、日韓合同の博士課程学生論文研究発表会(2006年)において招待講演が採択され発表を行い、論文集として刊行されている(”教育研究活動指標に基づく日本の政策関連大学院教育プログラムの評価”、日韓次世代学術フォーラ ム、第2回国際学術大会Proceedings、2005、pp.199-213)。また今後は第7章についても論文として何れかの学術雑誌に投稿を予定 している。なお本研究については、海外の著名な学者であるProfessor Roger Goodman(オックスフォード大学、英国、教育政策)、Professor Saul Gass(メリーランド大学、米国、OR)からも高い評価が得られていることを付記しておきたい。
 以上から、主査、副査、審査委員による全員が修正稿を審査した結果、本論文が本学博士論文として妥当であると結論付ける。 

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