GRIPS 政策研究センター Policy Research Center

客員研究員

2013/4/1 ~ 2015/3/31

政策科学におけるOR的手法の展開

研究代表者

 

本プロジェクトは,政策科学への展開を意識してオペレーションズ・リサーチの数理的方法論を研究し,政策の解析や立案に活用することを目的としています.オペレーションズ・リサーチ(OR)とは,戦略目標を効率的に達成するための数理的手法を追求しそれを実問題の解決に活用する学問分野です.ORの数理的手法には,統計・機械学習,最適化,シミュレーション,スケジューリングなどがあります.本プロジェクトは「ORの数理的方法論を現実の政策課題解決に活用すること」そして「数理的方法論自身を展開すること」の両方を目指しています.  まず,現実の問題については, 1.福島第一原発の事故以来問題となっている電力需給およびネットワーク制御の問題 2.医療・介護に関するスタッフスケジューリング 3.老朽化した施設の最適補修計画 4.その他、OR的手法が有効に活用できる政策科学上の問題 を取り上げ研究を進めています.昨年度は特に,1で掲げている,電力需給の解析を中心に研究に取り組みました.震災後,電力需給は一時大変逼迫し,危機的状況にありました.電力需給に関心のある方であれば,誰でも夏季の最大電力需給量に関心がある筈です.本研究では(一日の最低気温,最大気温,最低電力需給量)を説明変数として用いた線形回帰モデルにより最大電力需給量を適切に説明でき,このモデルを用いると,気候条件や経済の影響を除いて年ごとの電力需給の構造を比較することが可能となることを示しました.特に,東京電力管内,関西電力管内における最大電力需給量を解析し,電力需給の構造が震災前の2009年と2010年,2011年でははっきりと変化し,2011年の夏にはそれまでと比較して,東京電力管内で10%強、関西電力管内で5%強の電力需要の減少が起こったことを明らかにしました.2009年,2010年, 2011年と気候条件は全く異なり,電力需給の構造を異なる年の間で比較することは困難に見えますが,このモデルを用いると2009年と2010年は共通の電力需給構造を持つのに対し2011年は異なることがはっきりと捉えられます.  数理的方法論の部分では,半正定値計画問題の研究を行いました.半正定値計画問題は,よく知られている線形計画問題の行列版ともいえる最適化問題で,政策解析や立案の強力な道具となりうる重要な問題です.本研究では,弱実行不能と呼ばれる悪条件な半正定値計画問題の有する共通な構造を初めて明らかにしました.この研究をさらに進めることで,現在は解けない難しい半正定値計画問題が解けることが期待できます.また,この問題を解くためのソフトウェアの開発にも取り組んでいます. 本プロジェクトは2年間のプロジェクトの2年目ですが,今年度も引き続き,政策科学に有用な数理的方法論の深化とその活用を目指して研究を続けていきたいと思っています.