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リサーチ・プロジェクト

2014/4/1 ~ 2015/3/31

文化遺産保護の新たなアプローチ:食に着目した文化的価値の市場化方策の検討

研究代表者

文化的価値は遺贈価値や存在価値といった非利用価値が大きいものの、一方で、その利用価値を観光や産業などの形で経済社会に積極的に活用していくことも重要な課題となっている。本研究では、人々の営為と自然が相互に関連して創出されてきた文化的景観の価値を事例として取り上げ、主として農林水産業及び加工業等の産業政策面に焦点を当てた実証研究を行い、公的支援だけでなく、文化的価値を内包する経済活動の推進も含めた文化的価値の維持活用方策を検討する。

 「文化的景観」は、水田、畑地、河川領域など、地域に固有の伝統的産業及び生活と密接に関わり、これと一体となって展開してきた景観であり(文化財保護法第2条)、その多くは、農林水産業を中心としつつ、これに伴う祭りや行事などの生活様式、関連する営造物など、有形無形の多様な要素により構成されている。文化的景観は、これらの要素を一体的に保護し、その景観を創出してきた特定の時代の土地利用と、今日の産業や生活様式との調和の下に維持されていかなければならないが、第一次産業の衰退、中山間地集落の高齢化、労働力不足、近代化の影響といった様々な課題の中、これまで主として政府による公的支援により維持されてきた。近年では、棚田オーナー制度のようなボランティアや、各種NPOなどの協力に加え、グリーン・ツーリズムなどによる交流人口の拡大や、環境保全型栽培による棚田米など当該地域の環境を活かした生産物のブランディング化の試みも見られるようになってきている。

そこで、本研究では、ガストロノミーを中心とする創造都市戦略、スローフード・ムーブメント、原産地呼称保護証明など、生産者・消費者及び市場を意識した仕組みに着目し、観光だけでなく生産加工流通も視野に入れた持続的な生業維持の方策を検討し、文化的価値を維持していくための有効な仕組み及び条件整備のための政策的インプリケーションを得る。

具体的には、文献資料のレビュー及び専門家ヒアリングによる課題の整理、各種統計データの分析による客観的状況の把握、当該自治体担当者への意識調査、グッドプラクティスの抽出と詳細なヒアリングによる実態把握及び隘路の特定、必要な条件整備の検討及び取りまとめを行う。新たに得られた知見は文化政策分野の拡大につなげるとともに、成果として広く国内に発信し国内外の研究ネットワークの拡充・強化をめざす。