GRIPS 政策研究センター Policy Research Center

客員研究員

2010/4/1 ~ 2011/3/31

日本の医療費調達プロジェクト~高齢化が及ぼす税負担と経済活動への影響~

このプロジェクトでは、高齢化が医療制度に及ぼす影響を理論的及び数量的側面から分析する。特に、資金調達方法及びそれに伴う税負担と、経済全体に対する影響に注目する。また、医療制度における有効な政策改革案の評価を行う。 現在、日本の医療費は他のOECD諸国と比べてかなり低くなっている(2005年はGDPのおよそ6.6%にとどまった)。さらに、日本人は世界でも高い平均寿命と最も低い幼児死亡率を誇る。日本の医療制度は非常に良好に機能していると言える。 しかし、現状の体制及び資金調達方法を続ければ、低医療費の維持はむずかしくなるだろう。日本はすでに世界一の高齢者人口を抱え、2050年までに人口の40%が65歳以上になると予想されている。人口の高齢化は、次のふたつの面から医療制度を脅かす。まず、高齢者人口の増大は、経済における納税者及び保険料を納める人の減少を意味する。現在の医療費は国民健康保険と患者の自己負担で賄われている。政府は総額の4分の1を負担し、残りを雇用者と労働者が国民健康保険に強制加入する形で折半している。このことで明らかなのは、主に労働年齢人口(15歳から64歳)によって医療費が賄われているということである。それにもかかわらず、医療費の93%をも負担しているその労働年齢人口は、2050年までには総人口の50%にまで減少すると予想されている。 次に、高齢者は若者と比べてより高い健康上のリスクを抱え、介護の必要性も高い。さらに、高齢者介護に関わる費用が急速に増加しているというデータもある。すなわち、多数の高齢人口は、経済において平均的な医療費の増大を意味する。この医療費の調達のためには、政府の補助金か保険料のいずれかを増やさなければならないが、そのいずれも労働年齢人口の負担を増大させることになる。 この研究プロジェクトでは次のことについて理解を深める。 1. 人口動態の変化(特に高齢化)が総医療費に及ぼす影響 2.現行の資金調達方法では、将来的な医療費の増加により税金及び保険料負担が増大すること 3.上記の変化が人々の労働と貯蓄行動、さらに経済活動全体と福祉に与える影響 4.政策改革案の有効性 について理解を深める。 この研究結果が示唆するものは、人口構造と医療制度の来たるべき変化に対して適切な政府方針を策定する上で重要になるだろう。