GRIPS 政策研究センター Policy Research Center

客員研究員

2016/5/25 ~ 2017/3/31

大学発ベンチャー企業創出における大学による株式取得に関する研究

研究代表者
研究代表者

本研究は、ベンチャー企業創出における大学による株式の取得の有効性及びそのメカ
ニズムを検証するものである。大学による大学発ベンチャー企業の株式の取得は、学術
的にも実務的にも重要な研究課題の一つである。そのメカニズムの検証のために、ベン
チャー企業の成長に応じたステージ別のモデルを導入する。ベンチャー企業の成功指標
として組織としての生存及びエグジット(株式市場への公開もしくはM&A)を用い、
SBIR 補助金の獲得、ベンチャーキャピタルによる投資、製品出荷をマイルストーンと
して用いる。カリフォルニア大学発ベンチャー企業データセット(2000 年以降の特許ベ
ースの全ベンチャー企業が含まれている)を用いた定量分析及びインタビュー調査を行
う。

 

[学術的背景]
大学発ベンチャー企業の研究において、大学による株式の取得の是非は、長い間論争
となっている学術的研究課題である。大学がベンチャー企業の株式を取得することで、
ベンチャー企業の創出数に正の影響があることが明らかになっている(DiGregorio,
2003)。大学がベンチャー企業の株式を取得することにより、(1) 大学がベンチャー企業
の将来的な収益を獲得することができる、(2) ベンチャー企業と大学及びその研究者が
金銭的インセンティブを共有することにより、起こりうる利害の衝突を阻止することが
できる、(3) ベンチャー企業のクオリティに関するシグナリング効果を得ることができ
る、などのメリットがあることが見込まれている (Feldman et al., 2002)。Savva et al.
(2014)は、大学からベンチャー企業に特許をライセンスする際の特許の質に関する情報
の非対称性に着目し、数理モデルを用いて、特許の売り切り型やロイヤルティ型に比較
して、株式の取得が優位であることを示した。しかしながら、この検証をするためのデ
ータセットの取得が難しいために、実証的な研究はほとんど行われていない。

 

[何をどこまで明らかにするのか]
本研究では、以下のリサーチクエスチョンを明らかにすることを目的とする。
• RQ1: 大学によるベンチャー企業の株式取得は、ベンチャー企業の生存確率を高め
るのか。
• RQ2: 大学によるベンチャー企業の株式取得は、ベンチャー企業のエグジット(株式
市場への公開もしくはM&A)の確率を高めるのか。
• RQ3: 大学によるベンチャー企業の株式取得は、SBIR 補助金の獲得、ベンチャー
キャピタルによる投資、製品出荷の確率を高めるのか。