GRIPS 政策研究センター Policy Research Center

客員研究員

2014/4/1 ~ 2015/3/31

地球環境の持続性に関する指数の開発-Future Earthに向けた準備研究-

研究代表者

 産業革命以降、社会の目標が生産性の向上に集約されはじめ、第二次大戦後、一人当たりGDPが国民の富裕度を表現する指標として使用されるようになった。冷戦終結後は人間開発や持続可能性などの概念が注目を集め、一人当たりGDPに代わる様々な指数の開発を各種機関が行っている。しかし、地球規模の大気・水循環や多彩な生命の力を正当に評価しつつ、その中に人間の営みを位置づけた指標はまだ開発されていない。

 杉原、佐藤、峯は、京都大学グローバルCOEプログラム(平成19~23年度)において生存基盤指数の開発に携わった。そこでは地球圏、生命圏、人間圏という3つの圏からなる分析枠組みを設定し、各圏に固有の歴史と生成・発展の論理(「循環」、「多様性」、「自律と共感」)を反映するよう、9つの指数(「太陽エネルギー」、「大気・水循環」、「CO2排出量」、「バイオマス」、「生物多様性」、「人間による純一次生産の消費」、「人口」、「家族ケア指数」、「不測の死」)を選定した。これらを総合した生存基盤指数を概観すると、概して熱帯諸国が高く評価される一方、温帯諸国の評価は相対的に低くなった。また、HPI人間開発指数との相関を見ると、熱帯諸国では両指数の間で正相関が認められる一方、温帯諸国では負相関が認められた。これは、生存基盤の持続と人間開発の両立という目標の実現可能性が、熱帯においてより大きいことを示唆している。ただ、この研究は、指数の目指すものが、自然環境に対する人間の短期的な働きかけではなく、長期的な潜在力を測ろうとするものであることから、指数の意義、それが示す世界観がわかりにくいという問題を残している。

 本研究は、2015年から開始される国際的学際研究プロジェクトFuture Earthの展開を念頭におきながら、以上の蓄積と反省を踏まえつつ、地球環境の持続性を示す指数の本格的な開発を模索しようとするものである。具体的には、①地球温暖化や生物多様性に関する科学的知見の蓄積を反映しつつ、分析枠組みから指数選択に至るまでのプロセスを再検討し、②特定の国家(インド)に焦点を絞って分析を進め、生存基盤指数の示す世界観をより具体化させる。このようにして改善された指数を国際的に発信することで、依然として生産性の向上に重きを置く既存の発展パラダイムに一石を投じるとともに、持続可能な発展径路の構築にむけた公論形成に寄与したい。