GRIPS 政策研究センター Policy Research Center

客員研究員

2015/4/1 ~ 2017/3/31

地域電力市場のミクロ・マクロ分析:ボトムアップ とトップダウン・アプローチの統合

研究代表者

本研究では、アンバンドリング等によって競争的な市場に作り替えられようとしている電力市場に関して、詳細なデータ分析と新しい規制制度の理論分析を通じて、電力市場改革の効果を明らかにする。 長年の地域独占が無くなり、卸市場と小売市場の両方で、地域電力会社間の競争が進み、また、新規事業者も参入が加速する。再エネのような高設備費で不確実性をもつものがFIT 制度のもとで増加し、火力のように可変費が高いものと混在してプレーヤー間の多様性・非対称性が増加する。こうした状況下で、高頻度のスポット市場データや、入札データ、家庭レベルのデータ等を用いて小売市場をミクロ・データ分析し、震災・脱原発のようなショック、再生可能エネルギーの大量導入の影響や、競争促進政策等の市場介入の効果を分析する。この結果を地域別のマクロ・モデルに導入して、ミクロ・レベルの政策のマクロ・レベルでのインパクトも明らかにする。

 本研究の斬新さは、

(1) 政策的には、上流側の卸スポット市場の時系列データ分析と下流側の小売入札データ分析という 2 つの視点から、オークション理論の発展と軌を一にして発展してきた実証分析の手法、特に構造モデルに関する手法を、入札データのミクロ・データ分析に当てはめること、

(2) さらには、送電容量制約つきである程度つながりつつも、いくつかの地域に分断されている地域電力市場を水平的・空間的にマクロ分析し、ボトム=アップとトップ=ダウンの 2 つのアプローチの融合を行い、現実的な政策的含意を導くこと

の 2 点に集約される。

 (1)については、震災後の喫緊の課題として、入手可能な限り最も詳細なデータを用いて、将来の電力市場や競争環境がど のように変化するかを明らかにできる。Hosoe & Tanaka (2012)で提案したようなアンバンドリングの道筋 と同様に東電を分社化する方向で電力市場改革が始まったが、そのアンバンドリングを他の管区にまで広げたときの市場制度やその効果・影響については検証が必要である。データ上は、過去の研究では 1 年分のデータのみを用いていたものを数年分プールして用いることができるだけでなく、これらをパネル・データ化することを検討するが、その際の技術的困難(ダイナミック・パネル等)の問題についても解決策を考えることができるようになる。

 (2)については、規制やネットワーク整備事業が、ある地域の電力市場という一部門に与える影響を見るだけでなく、地域全体の生産や消費がどのように変化するかまで、多部門の枠組みで考える必要がある。「電力不足」 の問題は、カリフォルニア大停電や東日本大震災で見たように、ほぼすべての部門にマクロ的影響を与えるからである。ここでは応用一般均衡モデル Computable General Equilibrium, CGE モデルや空間的部分均衡モデル Spatial and Temporal Price and Allocation モデルを用いることを考える。

 研究を遂行するためには、最新のモデリング技術や欧米の知見が役立つため、米国と英国で活躍する研究者に参加してもらい、国際的・学際的な研究成果を目指す。