14. 働く女性達

最初に断っておくが、私はフェミニストではないし、とりわけ女性に優しいわけではない。とりたてておおらかでもない。女性と男性は根本的に違うし、それぞれの役割がある、と思っている。そして、別にジェンダーの専門家ではない。このような前提で話を進めていきたい。 

マレーシア、シンガポール同様、ベトナムでも多くの女性達が働いている。よく街中で、「逆ダッコちゃん」よろしく女性にぶら下がる男性を多く見かけたシンガポールほどではないだろうが、ベトナムの多くの女性達は普通にいろいろな場所で大きな役割を担っている、ように見える。国連が掲げる「ミレニアム開発目標」のベトナム版では、ジェンダー項目については目的に達していないようであり、確かに大臣の顔ぶれを見ても女性が少ないのだが、私の周りでは(国際機関や援助業界だから?)女性のマネージャーも珍しくない。

UNIDOがサポートしたヌックマム(魚醤)を製造する女性グループのリーダー

 

思えばマレーシアでも女性達はよく働いていた。私の勤務していたマレーシア工場の副社長は女性であった。当時まだピチピチの青年であった私は時々彼女に抱きしめられ、これって逆セクハラ?なんて思ったものだ。また、Board Memberでの女性は彼女だけだったが、マネージャーレベルでは女性はさほど珍しくなかったと思う。彼女らも別に家庭を犠牲にして働いているわけではなく、普通に結婚して子供もいた。妊娠してもしばらく勤務し、出産後しばらくして戻ってくるのは全く普通のことであった。私のスタッフも2人妊娠して出産して戻ってきたが、そのような状況に対する違和感は全く無く、「じゃあ出産したら戻ってきてね、待ってるよー」ってな感覚である。ベトナムでは企業に勤務しているわけではないので状況はわからないが、さほど変わらないような気がする。 

さてさて、日本はやはりこれらの国とは大分違うような気がする。まず、妊娠してもマタニティ・ドレスを来て勤務している女性が少ない。出産して職場復帰するパターンも少ない。大体の活躍する女性達は、結婚していないか、結婚しても子供がいないか、のケースが多いのではないだろうか。 

ただ、これをもって「日本の男達は理解がなくて女性蔑視なのよ!」という結論ちょっと短絡的な気がする。マレーシアやベトナムで女性達が長く働ける理由は、もちろんダンナたちの協力があるにせよ、別の要素もある。まず、職場が生活空間から近く、通勤時間が短い。マレーシアでは大体皆車で30分圏内に住んでいた気がする。ハノイの平均通勤時間は20分と聞く。くらべて、例えば東京は・・・・。平均通勤時間は大体50分以上だそうだ。しかも、通勤方法も、マレーシアやベトナムが車・バイクなのに対して、東京は超混みの満員電車。とても妊婦が乗れるわけはない(もっともベトナムで妊婦をバイクの後ろに乗っけているのは感心しないが)。そして、生活空間と勤務地が遠ければ、子供の送り迎えなども大変である。 

さらに、次の理由は、子育てのサポート体制である。マレーシアやベトナムでは、祖父母が日中子供の面倒を見てくれる場合が多い。そして、中・高所得層では、メイドを雇うこともさほど難しくはない(余談だが、ベトナムではこれら若いメイドさんを「おしん」と呼ぶ。そう、連続テレビ小説の「おしん」である)。これなら出産後早期の職場復帰が可能である。さてさて、日本では・・・。基本は核家族であるから、祖父母は遠いところに住んでいる。ベビーシッターやメイドなどはよほど所得が高くないととても雇えないだろう。 

とまあ、こんな感じで男女差別とかの前に日本、特に東京は女性が働きにくい場所なのだと思う。「じゃあ男が主夫になればいいじゃない!」という方いるかもしれませんが、男性も女性同様仕事はしたい人が多いと思うので、これはなかなか根本的な解決にはならないでしょう。 

そんなわけで、日本の女性達がもっと働くには、これらの問題を解決しないことには難しい気が・・。じゃあどんな対策が、って言われると難しいですが。今さら東京一極集中を軽減、ってのも難しいでしょうし。ただ、最近は奥さん側の両親の家に近いところに住む夫婦は増えているような気もしますね。また、そのうち香港のように東南アジアの国からベビーシッターを輸入する、なんてこともあり得るのでしょうか。マレーシアでは、インドネシアから輸入していたなぁ。でも住み込みのメイドさんが住めるほど広い家なんて日本には稀だし。あとは、会社勤めではなく自分でビジネスをする男女が増えればわざわざ都心まで通勤する必要もなくなるのでしょうか。まあでも、大学入学→就職活動→就職、という流れが完全に社会通念になっている今の世の中ではそれも難しいのでしょうか。IT業界などでは、若手の企業家も増えているようではありますが・・・。 

どれもなかなか難しい。女性が頑張れば頑張るほど少子化は促進されそう。極論を言えば、日本の人口はいまや多すぎで、未婚もしくは子供のいない夫婦が増えることで、人口がある程度まで減るのが避けられない自然の流れなのだろうか。江戸時代は日本の人口は5千万人くらいだったようだし、今が多すぎるのかも・・。自然に最適な人口まで減れば、ラッシュもないし、勤務地の近くにも住めるし、こんどは徐々に出生率も上がるのかな。でも、今だって、男性のみならず、多くの女性たちもやっぱり自分の子供って欲しいですよ、ね?さてさて・・・。 

20075月)

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