性差医学・医療
私は内分泌代謝内科医として性差医学・医療に取り組んでいます。性差医学・医療は病気の背景にある社会的・生物的性差に注目し、診断、治療、病気の予防に役立てるもので、すべての人に健康と福祉を推進することに役立ちます。
例えば、命に関わる虚血性心疾患の疼痛部位には性差があり、女性は男性よりも非定型的な部位の痛みを訴えることが分かりました。人々がこうした性差の事実を知っているか否かで、救命率が変わります。女性は月経周期、妊娠、出産、閉経に伴う内分泌環境の変化が顕著で、それにより病態が修飾されることから、男性に比べ診断がつきにくい面があります。女性は更年期や月経に伴い様々な自律神経症状を自覚しますが、それらは不定愁訴と扱われがちで、不調の原因となる病気が見逃されやすいのです。2019年からは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の女性の健康課題に採択され、「女性診療を支援するAI診断支援ナビゲーションシステムWaiSE の開発」の研究開発代表者を務めています。WaiSEは女性の多彩な症状を整理し診断へ導く、女性診療・性差医療の精度向上に役立つ診断支援アプリです。
性差医学・医療
女性医師・医学生キャリア支援
日本の女性医師比率は、近年、若年層では増加していますが、OECD諸国の中で依然として最下位です。年長の世代ほど女性医師比率が低く、キャリア形成のハンディ等から、リーダーとなる女性医師ロールモデルが少ない状況が続いて来ました。私はこれらの問題を解決するための研究や支援に、日本で先駆け的な存在として取り組んで参りました。2001年に米国から帰国後、ハーバード大学の附属病院で働いた経験を活かし、米国で出版されたWomen in Medicine -career and life managementを翻訳し「女性医師としての生き方―医師としてのキャリアと人生設計を模索して」の邦題で2006年に上梓。以来、医学部でのキャリア教育教材として使われて来ました。2006年から信州大学で女性医師・医学生キャリア支援を担当、2008年からは全国医学部長病院長会議男女共同参画委員、東京都男女平等参画審議会委員等も務めています。私たちは医学におけるジェンダー平等を達成し、それによって医療と社会に貢献するため、持続的な研究と努力を続けています。
女性医師・医学生キャリア支援