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リサーチ・プロジェクト

2013/4/1 ~ 2014/3/31

エビデンスに基づいたライフ・イノベーション政策の構築プロジェクト

研究代表者

ライフサイエンスをはじめとした基礎研究の究極的な目的は、国民生活の改善等を通じて社会・経済に貢献することである。こうした社会的要請を背景に、緊迫財政の中にありながらも、ライフサイエンスは政策的な重点分野に指定され、他分野より厚く公的なR&D投資がなされてきた。新成長戦略、第4期科学技術基本計画においてもライフ・イノベーションが科学技術政策上の支援を必要とする二つの重要目標の一つとしてあげられている。公的なR&D投資をする以上、基礎研究の成果は、具体的に社会に貢献することが求められるとともに、実際にどれだけ社会に貢献しているのかを国民に対して明確に説明することの必要性が高まっている。近年の政策評価法や市民社会の成熟、更には政権交代による政策立案過程の変革などによって、その傾向はますます強まっている。

 

こうした潮流は日本だけのものではない。欧米では科学技術が社会的に利用可能になるためのメカニズムを、エビデンスに基づき科学的に解明するScience of Science and Innovation Policyの研究領域も形成されつつある。すなわち、基礎研究が社会・経済のなかでどのような役割を担えるのかというかということをデータ分析から明らかにし、そのエビデンスに基づいて効果的かつ効率的な政策を設計するための新しい学問分野が、世界的にも必要とされている。

 

しかしながら、基礎研究の成果が社会にどのように還元・貢献されているのか、ライフサイエンスの価値を客観的エビデンスに基づいて説明することは非常に難しい。基礎研究の成果が社会に還元・貢献されるまでには長い時間がかかり、実際に成果となって結実するかどうかについても大きな不確実性がある。また知識のスピルオーバーといわれるように、基礎研究によって生み出された科学的知見は、無形の財産として、かつ契約関係等のないインフォーマルなルートを通じて社会に還元されるため、基礎研究が具体的にどのような技術や製品に結びついているかを、直接データに基づいて遡及することは困難である。

 

加えて基礎研究の成果を社会に還元するためには、技術開発、実用化・製品化といったプロセスを通じて、最終的には、社会の需要を喚起するような形となって提供されなければならない。そのためには基礎研究自体の有効性はもとより、ユーザー側のニーズに照らして基礎研究の成果がどのような形をとって社会に手渡されるべきか、またそれを生み出すためにはどのようなシステムが必要かについて、検討しなければならない。

 

そこで本リサーチ・プロジェクトでは、ライフサイエンスの成果が結実していると考えられている医療分野、ならびに食品分野に焦点をあて、ライフサイエンスの基礎研究が社会経済にどのように還元され、貢献しているのか、あるいはしうるのかといった、ライフサイエンスの広範な価値を、エビデンスに基づいて実証的に分析する。そして、それに基づいて、今後の研究資金配分、産学連携、研究活動の評価などに関して、具体的な政策立案に資する提言を行おうとするものである。