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リサーチ・プロジェクト

2015/4/1 ~ 2017/3/31

政治改革後の政策決定過程の変容

研究代表者

 

本研究の目的は94年の政治改革、01年の中央省庁再編を経て、日本の政策決定過程がいかに変化したのか探ることにある。

研究の趣旨と進捗状況

 政治改革および省庁再編が政策決定過程に及ぼした影響はこれまで研究者の関心を集めてきた。多くの研究は首相の指導力が増したと論じる(伊藤06, 待鳥05,12, 牧原05,竹中06)。首相以外の政治アクターに関する研究も進んでいる。国会議員自身の間では与党議員・組織の役割の低下が認識されており、背景に制度改革があることが指摘されている(建林06)。また、二大政党化や政権交代の結果、自民党と利益集団の結びつきが弱まっている(河村11、濱本12)。

 研究は日本の政策決定過程の理解を深めたが、多くの課題も残る。第一に首相の役割が増大したとしても、首相及び首相周辺の政治家・官僚による政策立案・調整の実態は明確ではない。特に第一次安倍内閣以降は解明の余地が多い。第二に首相と国会議員の関係も不明確である。首相が政策決定を主導するという議論は同時に議員の役割が減少したことを前提としている。ただ、全政策領域にこの議論が当てはまるかは疑問である。小泉内閣以後の内閣について特に検証が必要である。第三に、近年の族議員や官僚の役割についても分析の余地が大きい。利益集団中立化という先行研究の知見は、族議員の行動量が減少することを示唆する。利益集団中立化と同様の原理により官僚の中立化が起きたことも推測できる。だが、いずれも仮説にすぎず、検証する必要がある。第四に従来の研究は首相、国会議員、官僚、利益集団のいずれかに注目する傾向にあり、相互関係についてはさらに解明する余地が残る。

 以上を念頭に、本研究は2015年度には、政策決定過程における首相、与党議員、官僚、利益集団の役割に注目し、2001年以降の変容過程の解明を試みてきた。特に⑴農業政策、⑵電力エネルギー政策、⑶公共サービス市場化政策、⑷コーポレートガバナンス政策を取り上げ、次を明らかにした。⑴自民党政権が押し進めた大規模経営化政策は民主党政権で見直され、自民党政権復帰後再び推進されている。⑵民主党政権は福島原発事故後、電力事業の自由化に着手し、自民党も政権復帰後この路線を継続する。また、民主党は福島原発事故後、一時的に原子力発電への依存をなくす方向性を示すが、最終的には原子力利用を続ける方針に改めた。自民党も原子力発電への依存度は低下させつつ活用する政策を採っている。⑶民主党政権は公共サービスの市場化を進めた。⑷民主党政権はコーポレートガバナンスを強める方針を示し、自民党政権は一層強化するために会社法を改正した。

研究の目的

 これまでの研究の進展を踏まえ、まず各政策について展開をさらに把握する。また今後は各政策分野における首相を中心とする政策立案・調整のあり方を解明する。同時に、選挙制度や省庁体制の下で政策分野毎に政策決定過程における首相、与党議員、官僚、利益集団の役割を分析し、四者の相互関係が変容する過程を解き明かす。本研究でアプローチの適格性が確認できた場合、外部資金(三菱財団の人文科学助成)を獲得し、対象とする政策分野を拡大しより包括的研究に発展させたい。