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2016.6.20

Michelle Michot Foss氏による第125回GRIPSフォーラム「激動の国際エネルギー情勢」が行われました。

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6月20日(月)、テキサス大学エネルギー経済研究所所長兼チーフエコノミストであるMichelle Michot Foss氏をスピーカーに迎え開催された125回GRIPSフォーラムでは、「Global Views on Energy(激動の国際エネルギー情勢)」をテーマに、世界のエネルギー市場を考える上で欠かせない観点について議論が行われた。

 

Foss氏の講演は、単にこの先の石油などのエネルギー価格を予測したり、これまでの国際エネルギー情勢のトレンドを振り返って、政策分析をする場ではなかった。Foss氏はエネルギー問題の根源について、エネルギーの利用者で生産者でもある人間自身の生物的側面・心理的側面に焦点をあてる。「人々が物事を感受し、理解し、考えるプロセスにおいて、それらに影響を与える要素の正体とは?」こうした観点が、政策立案の際に理解しておかなければならない重要な点だとして、会場のオーディエンスに新たな観点をもたらしながら、講演は展開された。

 

国際エネルギーの取引には、エネルギー資源量・生産量等の物理的市場の一方で、そのデリバティブや出来高といった観点で取引を行う金融市場が存在する。Foss氏によれば、エネルギーに限らず、金融市場における価格や政府の規制において最も理解しておかなければならないことは、一般公衆の関心事だ。例えば、実際の価格を左右するものの正体は、価格そのものではなくて、人々がその価格をどのように感受したかということである。

 

エネルギー政策においては、ピークオイルに代表されるようにその時代のとあるパラダイムを築こうとするが、パラダイムには限界が訪れるのが常である。その主たる原因として、社会の動きを予測するためのデータの品質や可用性が挙げられるが、Foss氏はそもそも社会を動かす大きな因子である「一般公衆」の存在を重要視していないと指摘する。一般公衆であるエネルギーの利用者は、自分の利用する電力量、種類、料金などを逐一考えて購入しているわけではない。利用者の頭にあるのは、例えば「このビデオゲームで遊ぶために、このパソコンを立ち上げておきたい」とか、「自分の工場を稼動し続けたいが、石油は足りるだろうか」とかなのである。更に、Foss氏はそうした一般公衆について深く理解するために知っておくべきその性質を述べる。まず、人間は真実を理解している一方でフィクションを作り上げてしまう性質があること、また、自分の信じることを証明・検証してくれるような情報に賛同し、自分に異論を唱える情報に反対する傾向があること、更に、リスクに対しては日常的なリスクよりも災害等の大きな事態へのリスクだけを過剰に心配してしまうことである。

 

こうした一般公衆への理解は、価格設定や政治において活用されてきた。例えば、自分で意思決定したように思える購買行動は、「この購買層は、この価格で購入する」という誰かの予測に基づいて予め決められているのだという。これをFoss氏は、「理由無き意思決定(arbitrary coherence)」と表現した。政治においても、政府が望む行動を人々が起こすように、政府は情報をデザインしているという。

 

国際エネルギーにおいて、原油の価格に対する専門家の予測に対し、実際の価格は下回ることが多く、その予測ははずれ続けている。エネルギー価格を左右する要因は様々で、例えば環境への影響、安全性、安定性などが反映される。また、テクノロジーの進化がもたらす影響も大きい。例えば、地球のイメージを4Dで可視化することで地上の下に何があるのかを予測できるようになるなど、石油産業に新たな方向性や可能性をもたらした。

 

Foss氏は、今後国際エネルギーを考える上で本当に重要なことは、十分に石油や天然ガス等があるかどうか、どのように供給するかといったことではなく、世界中で必要とされるエネルギーを確保するためにはどうしたらよいかを、人々に考えさせるように仕向けることだと訴える。そのために、これまで述べたような一般公衆の性質・感受の癖を理解し、どのようなメッセージを送れば彼らに届くのかを考えて欲しいと、会場に集まる人々を鼓舞した。

 

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2016.6.20

Michelle Michot Foss氏による第125回GRIPSフォーラム「激動の国際エネルギー情勢」が行われました。

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6月20日(月)、テキサス大学エネルギー経済研究所所長兼チーフエコノミストであるMichelle Michot Foss氏をスピーカーに迎え開催された125回GRIPSフォーラムでは、「Global Views on Energy(激動の国際エネルギー情勢)」をテーマに、世界のエネルギー市場を考える上で欠かせない観点について議論が行われた。

 

Foss氏の講演は、単にこの先の石油などのエネルギー価格を予測したり、これまでの国際エネルギー情勢のトレンドを振り返って、政策分析をする場ではなかった。Foss氏はエネルギー問題の根源について、エネルギーの利用者で生産者でもある人間自身の生物的側面・心理的側面に焦点をあてる。「人々が物事を感受し、理解し、考えるプロセスにおいて、それらに影響を与える要素の正体とは?」こうした観点が、政策立案の際に理解しておかなければならない重要な点だとして、会場のオーディエンスに新たな観点をもたらしながら、講演は展開された。

 

国際エネルギーの取引には、エネルギー資源量・生産量等の物理的市場の一方で、そのデリバティブや出来高といった観点で取引を行う金融市場が存在する。Foss氏によれば、エネルギーに限らず、金融市場における価格や政府の規制において最も理解しておかなければならないことは、一般公衆の関心事だ。例えば、実際の価格を左右するものの正体は、価格そのものではなくて、人々がその価格をどのように感受したかということである。

 

エネルギー政策においては、ピークオイルに代表されるようにその時代のとあるパラダイムを築こうとするが、パラダイムには限界が訪れるのが常である。その主たる原因として、社会の動きを予測するためのデータの品質や可用性が挙げられるが、Foss氏はそもそも社会を動かす大きな因子である「一般公衆」の存在を重要視していないと指摘する。一般公衆であるエネルギーの利用者は、自分の利用する電力量、種類、料金などを逐一考えて購入しているわけではない。利用者の頭にあるのは、例えば「このビデオゲームで遊ぶために、このパソコンを立ち上げておきたい」とか、「自分の工場を稼動し続けたいが、石油は足りるだろうか」とかなのである。更に、Foss氏はそうした一般公衆について深く理解するために知っておくべきその性質を述べる。まず、人間は真実を理解している一方でフィクションを作り上げてしまう性質があること、また、自分の信じることを証明・検証してくれるような情報に賛同し、自分に異論を唱える情報に反対する傾向があること、更に、リスクに対しては日常的なリスクよりも災害等の大きな事態へのリスクだけを過剰に心配してしまうことである。

 

こうした一般公衆への理解は、価格設定や政治において活用されてきた。例えば、自分で意思決定したように思える購買行動は、「この購買層は、この価格で購入する」という誰かの予測に基づいて予め決められているのだという。これをFoss氏は、「理由無き意思決定(arbitrary coherence)」と表現した。政治においても、政府が望む行動を人々が起こすように、政府は情報をデザインしているという。

 

国際エネルギーにおいて、原油の価格に対する専門家の予測に対し、実際の価格は下回ることが多く、その予測ははずれ続けている。エネルギー価格を左右する要因は様々で、例えば環境への影響、安全性、安定性などが反映される。また、テクノロジーの進化がもたらす影響も大きい。例えば、地球のイメージを4Dで可視化することで地上の下に何があるのかを予測できるようになるなど、石油産業に新たな方向性や可能性をもたらした。

 

Foss氏は、今後国際エネルギーを考える上で本当に重要なことは、十分に石油や天然ガス等があるかどうか、どのように供給するかといったことではなく、世界中で必要とされるエネルギーを確保するためにはどうしたらよいかを、人々に考えさせるように仕向けることだと訴える。そのために、これまで述べたような一般公衆の性質・感受の癖を理解し、どのようなメッセージを送れば彼らに届くのかを考えて欲しいと、会場に集まる人々を鼓舞した。

 

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