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2016.2.3

林文夫教授による昼食セミナー「戦前と戦後の日本経済発展/Japan’s prewar and postwar economic development」が行われました。

hayashiufumio

 

(取材・文責:企画室広報担当)

 

2月3日(水)、本学で定期的に開催されている昼食セミナーにおいて、「戦前と戦後の日本経済発展」をテーマに、本学の教員で著名な経済学者である林文夫教授による講義が行われた。

 

林教授は日本の経済成長の歴史を特徴的な3つのフェーズに分類して説明した。一つ目は、戦前の長期経済低迷期、第二に、「東洋の奇跡(Japanese miracle)」として世界に知られる戦後の劇的な経済発展期、そして最後に1990年以降の「失われた10年」である。

 

林教授は戦前の経済低迷期について中心的に触れ、初期の経済停滞を招いた要因として、日本家庭に根付いていた家族的役割分担を指摘した。更にそれは、第二フェーズの経済成長の開始を遅らせた文化的背景となったと説明した。

 

第二次世界大戦前は最小限に遡っても1885年以降から、日本の実質GNPは米国の約30%に低迷していた。そこには何らかの主要な要因=「barrier(障壁)」が存在していたと林教授は指摘する。教授は2つの産業セクターの経済成長モデルを紹介し、そのbarrierが仮に存在しなかったと仮定すると、戦前の日本の実質GNPは40%ほど高くなると主張した。

 

では、「barrier(障壁)」の正体はなんだろうか。林教授は、それは労働移動を阻害するbarrier(障壁)であるとした。労働力の分配が経済全体の生産の効率性向上を妨げる、「Sectoral Misallocation Hypothesis(産業構造分配不適合説)」だとした。その背景には前述した日本の伝統的な家族規範があった。戦前の日本では農家の世帯主の役割を一家の長男が継承するという文化的・社会的規範が強く存在したため、都市部等への社会的な人の移動・移住が次男・三男に限られ、労働力の流動性が滞った。林教授は統計を参照し、戦前の農業従事者数が約1400万人をキープしていたことを示した。日本経済は、約50年かけて農業従事者割合を60%から40%に減少させたが、他の先進国・途上国と比べても相当の年月をかけてしまったのである。このように、農産業から別の産業への労働力の流動が停滞し、戦前の日本経済発展を妨げるbarrierとなったのである。

 

林教授は失われた10年に関する自身の研究についても言及し、熱心な学生たちや分野を超えた教授陣からの質問に答え、闊達な質疑応答が交わされた。

 

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