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2020.2.5

「スター・サイエンティスト と日本のイノベーション」プロジェクトの研究成果として白書を発表

 *プレスリリースはこちら(2020.2.5)

 

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早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センターと政策研究大学院大学は、共同研究プロジェクト、「スター・サイエンティストと日本のイノベーション」※1の成果として、「スター・サイエンティスト白書2020」を作成いたしました。

 

本共同研究プロジェクトは、卓越した研究業績を輩出する「スター・サイエンティスト」という観点から、研究費の配分に関する科学的エビデンスの提供を目指しています。日本の科学技術イノベーションを促進するために、介護および福祉に係る予算枠が増大する背景の下、効果的な研究費の配分が重要となるであろう将来に備え、科学技術分野ごとにどのような研究者がどの程度存在するのか、そうした研究者にどの程度配分すると良いのか、研究成果のみならずエグジット(産業化可能性)を見据えた研究費の最適な配分に関する科学的エビデンスは依然限られているからです。

スター・サイエンティストに関する先行研究は多数存在する一方、この研究は大規模なデータセットを構築することの困難性、不十分なデータ、成功バイアスなどにより、米国以外の国での分析はあまり進んでいないのが現状です。本プロジェクトにおいては、日本のスター・サイエンティストに関する網羅的なデータベースを構築することにより上記の課題を解決し、現存する世界最大の米国以外のスター・サイエンティストに関わるデータセットとして分析の礎にいたします。

この度完成した「スター・サイエンティスト白書2020」は、米国のClarivate Analytics社によるHighly Cited Researchers(高被引用論文著者)などの高いパフォーマンスの研究者を抽出する方法を参考にしながらも、独自の抽出方法によって国別・分野別でランキング化した上で、1981年~2014年各年のHighly Cited Papers(高被引用論文)数を集計し、順位・絶対数・HCP数に対する各国のシェア率などの推移をグラフ化したものです。

 

白書の主な論点

(1) 中国の台頭

  • 現行のスター・サイエンティストの数に関する国別ランキングをみると、全分野の合計で、米国が圧倒的上位を占めており、英国がそれに続いているが、3位の中国も2位の英国とほぼ同数である。中国は、分野別では特に、工学では米国を抜き両リストにおいて1位、材料科学では米国とほぼ同数でロング・リストでは1位となっている。その他、化学、コンピュータ科学、環境・生態学、地球科学、数学でも両リストで1位の米国に次いで2位となっており、大きな存在感を示している。

  • 高被引用論文の国別割合の時系列変化をみると、米国は全分野の合計で1980年代から直近まで圧倒的に1位であるが、全体に占める割合は低下してきており、高被引用論文の生産国の多様化が進んでいる。特に中国の伸びが目覚ましく、直近では工学、材料科学、コンピュータ科学では米国を抜いて1位となっている。これらの3分野のいずれにおいても、特に2008年以降に中国が急激な伸びを見せている。農学、化学、環境・生態学、数学に関しても近年の中国の伸びは目覚ましく、米国を急追している。

  • こうした高被引用論文を生産している中国の研究機関として、中国科学院の存在が際立っている。研究者の数が多いため他の機関と単純には比較できないが、複数の分野において、2005-2009年の機関別ランキングに登場し、2010-2014年にはさらに順位を上げており、高被引用論文の生産アクティビティの高まりが時系列上で見て取れる。

  • 一方で、臨床医学、免疫学、微生物学、分子生物・遺伝学、神経・行動科学、薬理・毒物学、精神医学・心理学といった、医学関連の分野では、スター・サイエンティストや高被引用論文に関して中国の存在感はまだ確認されない。

 

(2) 日本の現状

  • 現行のスター・サイエンティストの数に関する国別ランキングをみると、ショート・リストとロング・リストのいずれにおいても、全カテゴリーの合計で、日本は12位である。動植物科学ではショート・リストで3位、ロング・リストで5位となっており、化学ではいずれも5位、材料科学では5位・6位、免疫学では4位・6位となっており、これらの分野では一定の存在感を示している。

  • しかしながら、機関別の高被引用論文のランキング上位の時系列変化を見ると、上に挙げたいずれの分野においても、2009年以前はいくつかの日本の機関が10位以内に登場していたにもかかわらず、2010-2014のランキングでは10位以内に入っている日本機関はない。

  • また、高被引用論文の国別割合の時系列変化をみると、全分野の合計において、 2000年代に入ってから日本が占める割合は緩やかに低下してきている。分野ごとに直近4年間の傾向をみると、免疫学で若干の増加がみられ、動植物科学と化学ではほぼ変化なしであるが、材料科学では明らかな減少傾向がみられる。

  • 材料科学といった、他の分野と比べて国際的な競争の中で日本が存在感を示しているはずの分野においても、近年の中国の台頭に押されて、日本の国際的な存在感が低下している可能性がある。

 

 

※1「スター・サイエンティストと日本のイノベーション」

本研究は、科学技術振興機構(JST)のRISTEX「科学技術イノベーション政策のための科学研究開発プログラム」の2017年度採択プロジェクト「スター・サイエンティストと日本のイノベーション」JPMJRX17B4、研究代表者:牧 兼充)の支援を受けたものです。

 

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