2022年5月16日（月）にGRIPSフォーラムを開催致しました。今回のGRIPSフォーラムでは、田中 伸男氏（Innovation for Cool Earth Forum （ICEF）運営委員会議長、元国際エネルギー機関（IEA）事務局⻑）をお招きし、「エネルギー安全保障の地政学とカーボンニュートラルへの変革」という演題でご講演いただきました。

概要：

IEAは1974年に作られた石油戦略備蓄制度を運用するエネルギー安全保障のための国際機関です。最近のウクライナ侵攻でも備蓄が二回にわたって放出されました。欧州はロシアの侵攻に対し石炭石油の禁輸、さらにガスの禁輸まで考えています。これは世界にどのようなインパクトを持つのでしょう。脱炭素の流れは去年のCOP26で強まりましたが、ウクライナ危機でこれが加速化しようとしています。欧州は自然エネルギー利用を一段と強化します。他方ロシアからのガスが無くなったらドイツは今年中の脱原発を維持できるのでしょうか。日本は原発をど

うするのでしょう。ドイツは水素を脱炭素の頼みの綱にしていますが日本では水素の利用をどう進めたらいいのでしょう。NATO対ロシア、米国対中国の対立の中で日本はどんな外交をすればいいのか、エネルギーや原子力を中心に考えてみましょう。

講演者:田中　伸男　氏 （Innovation for Cool Earth Forum （ICEF）運営委員会議長、

　　　元国際エネルギー機関（IEA）事務局⻑）

講演者略歴

1972年東京大学経済学部卒業後、73年に通商産業省（現経済産業省）へ入省、2007年から2011年の間、国際エネルギー機関（IEA）事務局⻑。IEAでは「包括的なエネルギー安全保障」の概念を開拓した。また中国インドなどの非加盟国の取り込みを進めたほか、気候変動、再生可能エネルギー、低炭素エネルギー経済への移⾏などに焦点を当てた活動を推進。

2015 年から20年まで公益財団法人笹川平和財団理事⻑次いで会⻑。現在はTanaka Global Inc. CEOの他、財団法人日本エネルギー経済研究所特別フェロー、千代田化工建設株式会社社外取締役、イノテック株式会社社外監査役、日本エア・リキード社 Senior Executive Advisor、“Innovation for Cool Earth Forum (ICEF)”運営委員会議⻑を務める。教育活動では東京大学公共政策大学院客員教授の他、米国Columbia大学Center on Global PolicyでDistinguished Fellowも務める。

通商産業省（現経済産業省）では、通商政策局通商機構部⻑をはじめ、数々の対外関係ポストを歴任。世界貿易機関 (WTO) での多角間ラウンド交渉、⼆国間の⾃由貿易協定のため、通商交渉を主導。1982 年から1985年の間はワシントン駐在の外務省在アメリカ合衆国⽇本国大使館で経済担当⼀等書記官を務めて半導体貿易摩擦問題などに取組み、1998年から2000年まで再び在米大使館で商務エネルギー担当公使。パリの国際機関、経済開発協力機構（OECD）の科学技術産業局⻑を⼆回（1989-95, 2004-07）にわたり務める。

＜GRIPSフォーラムとは＞

政策研究大学院大学（GRIPS）は1997年の設立以来、政策研究に特化した唯一の大学院大学として様々な政策課題についての教育・研究を進めております。本フォーラムでは、GRIPSが持つ政策研究に関する広範なネットワークを活用し、各界のリーダー（政府関係者、行政官、産業界、研究者など）や本学関係者から、各種政策課題に関する貴重なお話を伺います。フォーラムは学内からはもちろん、学外からも広く聴講者を募集しております。