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イノベーション促進型資金配分システムの発展メカニズムに関する研究

博士論文、要旨、審査要結果

学位取得者氏名: 市川 類
学位名: 博士(政策研究)
授与年月日: 2013年3月19日
論文名: イノベーション促進型資金配分システムの発展メカニズムに関する研究
主査: 角南篤
論文審査委員: 後藤晃、鈴木潤、大山達雄、三上喜貴(長岡技術科学大学)

Ⅰ 論文要旨

 本研究は、国の研究開発資金の配分に係る組織・制度のなかで、イノベーションの促進を目的とした主に産業技術に対する公的資金配分システムの比較研究であり、主要先進国間の資金配分制度の多様性とそこに至る発展過程を経路依存の視点を用いて分析解明するものである。筆者は、国の公的研究開発資金の配分システムを、①科学知識増進型、②イノベーション促進型(IFS)、③国家事業実施型と大きく三つに分類し、そのうえでIFSについて大学向け、公的研究機関向け、民間企業向けと細かくパターン分けをすることで、先進諸国の間に存在する多様な資金配分システムの特徴を整理している。さらに、それらの多種多様なシステムを国家イノベーションシステムの比較の中に位置づけ、IFSの多様性を経路依存の視点を用い、それぞれの制度の発展経緯の違いから説明しようと試みている。

比較には、OECD11か国をサーベイし、そのうえで日、米、欧のIFSの発展経緯をとくに取り上げ分析を試みている。

 本研究が示唆する点は、それぞれのIFSは既存システムの影響を受け経路依存的に創設され、継続的な見直しの動きと外的な変動により独自の進化をすることから、今後も主要先進国では多様なIFSの存在が続くことが予想される。したがって、著者は政策的含意として、より「イノベーションの効率性」を高めるようなIFSの設計には、経路依存の脱却と外的変動を認識したイノベーション政策の導入が必要ではないかと指摘している。

 

Ⅱ 審査結果報告

去る2月18日の午前10時より論文発表会を行い、その後引き続き5名の審査委員による論文審査委員会を開催した。審査委員は、外部審査委員として三上喜貴・長岡技術科学大学教授を加え、後藤晃教授(副指導教員)、鈴木潤(副指導教員)、大山達雄副学長、そして角南(主指導教員)の5名である。審査委員会では、それぞれの委員からの批評を基に厳正な審査を行い、合議により修正意見を付し条件付き合格とした。産業技術に対する公的資金の配分システムの比較という内容は、大変重要なテーマで興味深いという意見が出された一方で、主な修正意見としては、「理論的枠組み」として「経路依存」と「全体合理的な視点から得る最適解」が対抗的な仮説として使われているが、イノベーションの効率性とは何を意味するのかなど前提となる概念の定義にあいまいなところがあり、説得力のある論拠となっていないという指摘がほぼ全委員からなされた。審査から約3週間後、修正意見に応じた論文の再提出を受け、主査一任のもとに修正個所を確認、理論的枠組みの再構成や経路依存に係る仮設の見直し、政策的含意の修正など条件を満たしていると判断した結果、最終的に合格とした。

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