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The Impact of Mobile Phone Coverage Expansion on Market Participation and Migration: Panel Data Evidence from Uganda

博士論文、要旨、審査要結果

学位取得者氏名: 武藤 めぐみ
学位名: 博士(開発経済学)
授与年月日: 2009年7月22日
論文名: The Impact of Mobile Phone Coverage Expansion on Market Participation and Migration: Panel Data Evidence from Uganda
主査: 山野峰教授
論文審査委員: 大塚啓二郎教授
福島隆司教授
澤田康幸教授(東京大学)
木島陽子准教授(筑波大学)

I. 論文内容要旨
 貧困に苦しむ国の農村部で、農家が高い所得を得るためには、農産物を市場に売ったり非農業労働市場で働いたりする必要がある。しかし、そのような地域では様々な要因が原因となり、市場への参加が阻害されている。そのひとつの原因がインフラの不備である。道路や情報インフラが整っておらず、農村に住む農家は市場に参加することができずに、自給自足の生活から抜け出すことができずに低所得にとどまる結果となっている。サハラ砂漠以南アフリカ(以下アフリカ)では、これまで重要な情報インフラのひとつである電話回線の普及率は低くとどまり、 また回線が通っていても機能しない場合が多かった。そのため、農村に住む農家が農作物を売ろうにも、その作物を買い取る売人(トレーダー)と連絡が取れ ず、結局、農作物を高値で売る機会を失っていた。また、都市部での労働市場に出稼ぎに行く場合でも、都市部との連絡はほとんどなく、人づての不確かな情報に頼らざるを得なかった。
 ところが、ここ数年、携帯電話が急速に普及に、アフリカの多くの国でも携帯電話の回線が国の隅々にまで開通するようになった。2004年では、100人あたりの携帯電話保有台数は9.1台にまで増加している。本研究が対象とするウガンダでも、携帯電話回線の人口に対する 普及率は2003年の46%から2005年には70%まで上昇している。携帯電話回線が開通し、携帯電話の使用頻度が増加するにともない、これまで不十分であった情報インフラが改善され、農村部からでも市場への参加が比較的容易になるのではないかと予想される。しかし、アフリカにおけるこのような急速な携帯電話の影響に関して、これまでほとんど研究が行われていない。そこで、本研究の大きな目的は以下の2つにまとめられる。
 (1)ウガンダにおける携帯電話回線の普及が、農家の農産物市場への参加に及ぼす影響を推計する。その際、鮮度が重要なバナナと鮮度がそれほど重要でないメイズ(白トウモロコシ)の二つの作物に関して比較研究を行う。
  (2)同じく、ウガンダにおける携帯電話回線の普及が、農村部からの出稼ぎにどのような影響を与えるのかを推計する。携帯電話が普及する以前は、人づての情報が重要であり、その情報を得るためには、カンパラに住む同部族に頼ることが多かった。よって、携帯電話を利用することで、それまで使われていた人づてによる情報伝達が、携帯電話と代替の関係にあるのか補完の関係にあるのかが重要な仮説のひとつである。
 この二つの目的を達成するために、本研究 ではウガンダにおける2003年と2005年のパネルデータを用いて分析を行った。調査した94農村のうち、2003年の時点で携帯電話が開通していたの は41農村であったが、2005年にはその数が87農村にまで増加していた。よって、基本的には携帯電話が2003年にすでに開通していた地域と、2003年と2005年の間に開通した地域とを比較することにより分析を行った。本研究の成果は、国際的ジャーナルWorld Development への掲載がすでに決まっておりForthcoming Paper としてウェブで公開されている。また、世界銀行が毎年発行する報告書 World Development Report の2007年度版に本研究の成果が引用されている。現在、もう一本の論文を投稿に向け準備中である。 
 
II. 審査結果報告
  本論文の最終報告に引き続き、平成21年4月21日(火)15時より審査委員会が開催された。審査委員は山野峰教授(主査)、大塚啓二郎教授(副指導)、 福島隆司教授(副指導)、澤田康幸教授(副指導:東京大学)、木島陽子准教授(筑波大学)の5名であった。審査委員からのコメントは主に次の8点である。
 

  1. Availability of electricity at the household level may be a significant factor determining mobile possession.

  2. Non-parametric expression of banana price schedule with distance to district center.

  3. Quote Amemiya (1981) to discuss the possible biases in Probit estimation compared to linear estimation.

  4. As one of the determinants of migration, include the ethnicity composition of the urban center close to the household location.

  5. As determinants of migration choice, include the number of migrants from same household and whether there is a trader in the household.

  6. Discuss the basic picture of migration within Uganda.

  7. Discuss the results of the conceptual model in the context of what is actually happening to migration in Uganda.

  8. Perform regression discontinuity estimations for robustness check.

 

これらの点を修正・反映するという条件で審査委員全員は本論文が本学博士論文として妥当であると結論つけた。

〒106-8677 東京都港区六本木7-22-1

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