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MATHEMATICAL MODELING ANALYSES FOR INVESTIGATING THE FUTURE EXPANSION OF THE ELECTRIC POWER SYSTEM IN INDONESIA

博士論文、要旨、審査要結果

学位取得者氏名: Maxensius Tri Sambodo
学位名: 博士(社会システム分析)
授与年月日: 2012年9月5日
論文名: MATHEMATICAL MODELING ANALYSES FOR INVESTIGATING THE FUTURE EXPANSION OF THE ELECTRIC POWER SYSTEM IN INDONESIA
主査: 大山達雄
論文審査委員: 諸星穂積、Roberto Leon-Gonzalez、土谷隆、伏見正則(東京大学名誉教授)

I.  論文要旨

  本論文はインドネシアにおける電力システム拡充計画の策定に対して、各種の数理モデル分析手法を適用することによって政策の分析、評価を行ったものである。最初にインドネシア全体の電力需要のほぼ8割を占めるとされるジャワ-バリ地域の電力の需要、供給の過去35年間の成長推移過程を分析し、電力システムの供給を火力(原油、石炭、天然ガス)、水力等の形態別、そして電力供給公社(PLN)、と独立事業者といった事業者別に分析している。次にインドネシアにおける電力需要の成長過程を計量経済モデル、時系列モデル、ベイジアンモデル手法を用いて詳細に分析し、電力需要と経済成長の関係を明らかにし、電力需要の弾性値の計測、Hodrick-Prescott Filterモデルによる景気変動との関連分析、等を行っている。さらにこれらの各種モデルによる推計結果の比較分析を詳細に行っている点は評価できる。

  本論文の主要部分であるジャワ-バリ地域の電力システム拡充計画策定に関しては、数理計画最適化モデルを用いた政策分析を実施している。最初にジャワ-バリ地域における望ましい将来の電力システムがどのようなものかを、火力(原油、石炭、天然ガス)、水力等の形態別、そして電力供給公社(PLN)、と独立事業者といった事業者別に求める数理計画最適化モデルを構築する。ここでは電力需要を表す日負荷曲線の最適化モデルへの組み込み、需要構造の詳細化(時間帯別、形態別)等がモデルの新規改善点である。最適化モデルの評価基準としては電力システム供給コストの最小化が用いられるが、モデルの感度分析として、新規火力プラントに対する燃料コストの変動に対するシミュレーションも行っている。

  さらには電力システム供給コストの最小化という評価基準の下で得られた最適解に基く将来(2020年)のジャワ-バリ地域の最適電力システム拡充計画に対するCO2発生量の分析も試みている。京都議定書プロトコルに基く部門別アプローチに対する政策シミュレーションを行うことによってインドネシアのCO2排出量予測評価が行われる。加えて炭素クレジット方式の政策シミュレーション分析も行なっている。

  最後に上記電力システム供給コストに加えて、もう一つの最適化評価基準としてCO2排出量最小化を設定し、上記モデルに加えて2種類のモデルによって得られる最適解、最適電力システム拡充計画に対する最適解分析が詳細に行われるのは、本論文の一つの大きな特徴である。システムコスト最小化とCO2排出量最小化という2つの評価基準の間の最適解に関するトレードオフの関係が明示的に得られ、将来に向けてのジャワ-バリ地域電力システムの最適拡充計画をどのようにして選択すべきかについての本論文の結論部分がこの多目的関数に基く最適解分析によって得られる。インドネシアの国家計画としてのジャワ-バリ地域電力システム拡充計画に対する数理計画最適化モデル分析に基く政策分析評価が本論文の主眼である。

  本論文作成に当たって得られた研究成果は、すでに多くの国際学会、シンポジウム等で発表されている。2010年から2012年にかけての国際学会発表は6件、刊行論文は4編、そしてすでに投稿し、査読中論文は4編、報告書、学術雑誌、新聞等の原稿、記事は計14件である。代表的な刊行論文は下記のとおりである。

Sambodo, M.T., & Oyama, T. (2010). The electricity sector before and after the fast-track program. Economics and Finance in Indonesia, 58(3): 285-308.

Sambodo, M.T., & Oyama, T. (2011a). Investigating economic growth, energy consumption and their impact on CO2 emissions targets in China. Journal of Asian Public Policy, vol 4(3), 279-306.

Sambodo, M.T., & Oyama, T. (2011b). Investigating electricity consumption and economic growth in Indonesia: A time series analysis 1971 – 2011. Review of Indonesian Economic and Business Studies (RIEBS), Vol. 2, No. 1. June 2011, LIPI (Indonesian Institute of Sciences)

Sambodo, M.T., & Oyama, T. (2011c). Economic, energy and CO2 intensity valuation in Indonesia’s manufacturing industry. Jurnal Ekonomi dan Pembangunan (Journal of Economic Development), LIPI (Indonesian Institute of Sciences).

 

 

II.  審査結果報告

本論文の最終報告に引き続き、平成24年8月2日(木)11時30分より審査委員会が開催された。審査委員は大山達雄教授(主査)、土谷隆教授(副査)、諸星穂積教授(副査)、Roberto Leon-Gonzalez准教授、伏見正則名誉教授(東京大学)の5名であったが、 論文としての構成、論理の展開といった点での完成度が高い、数理モデルを用いた定式化が難しいとされる分野への挑戦意欲とその成果を評価する、すでに刊行論文が数編あることは博士論文としてかなりの評価が得られていることを保証する者である、現実のエネルギー、電気事業政策分野へのより具体的、実際的な貢献を期待する、といった意見に加えて、本論文について以下のような意見が出された。

1.     電力需要想定において日負荷曲線のみが用いられている点について、もう少し問題点の指摘、改善点の示唆があった方がよい。

2.     CO2排出量削減の部門別アプローチについて需要サイド想定シミュレーションのケースをもう少し追加してはどうか。

3.     作成されたシナリオの中で電気事業者の内訳についてより詳細な記述があるとよい。

4.     細かな英語表現、図表、数式、参考文献表示、等においてタイプミスが散見されるので、修正して欲しい。

上記のコメントに対して、著者は直ちに論文の修正を行い、修正稿を提出し、主査の最終確認を経た上で各審査委員の了解を得た後に博士論文最終版として提出した。審査委員全員は本論文が本学博士論文として妥当であると結論づけた。 

 

以 上

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