政策研究大学院大学(GRIPS:National Graduate Institute for Policy Studies)の改革と挑戦の歴史は、1977年に埼玉大学に創設された大学院政策科学研究科(GSPS:Graduate School of Policy Science)に始まります。
GRIPSの創設者で初代学長の吉村融が構想したGSPSは、中央省庁、地方自治体、政府関係機関等の優秀な職員を学生として受け入れ、政策研究・教育の新たな地平を拓く取り組みに挑戦するものでした。GSPSでの20年間において形成された独特の学風は、現在のGRIPSの基礎となり、GSPS修了生の多くが、それぞれの国や地域、国際舞台において指導者的役割を担っています。
GRIPSはGSPSの実績と成功を礎に、1997年に独立の大学院大学として開学しました。GRIPSは、政・産・官・学の協働と国際的な知的協力に立脚した高度な政策研究を推進するとともに、国内外の民主的統治(Democratic governance)を担う指導的人材、政策プロフェッショナルの育成を使命として、さらに20年の実績を築いてきました。現在、112の国と地域で、4,528名の修了生が活躍しています。
開学から20年が経過し、GRIPSを取り巻く環境は大きく変化しています。2015年9月、ニューヨーク国連本部において「国連持続可能な開発サミット」が開催され、193の加盟国によって持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)が採択されました。このように、国際社会は国家間の協働が求められる大規模かつ困難な課題を数多く抱えています。GRIPSにおける政策研究や指導者育成は、必ずやSDGsのいずれかに関連するものです。GRIPSは、一流の政策研究・教育を以って世界に確実に貢献していくため、「GRIPSビジョンと5つの戦略」を策定し、全学的な取り組みを開始しています。
GRIPSは、我が国を代表する公共政策の研究教育機関として、欧米諸国やアジア諸国等のトップクラスの研究教育機関との競争力を強化し、さまざまな政策課題の解決に向けてより積極的に挑戦していく責務があります。
開学20周年を契機として、今後の我が国の政策研究の在り方を考え、新しい次元の政策研究を構想するとともに、地球的規模の課題解決に貢献できる指導的人材の育成を図ってまいりたいと思います。
政策研究大学院大学学長
田中 明彦