田舎

 

R5. ライチャウの朝

ディエンビェンフーからライチャウへの道は2年前ずいぶんよくなりました、とドライバーがいう。前は丸一日かけていたのがいまは2、3時間だと。それでも狭く曲がりくねった道は車酔いになりそう。もしほんとのド田舎を訪れたかったら、ここに来ることをお勧めする。星はおそろしく降るし、朝もやは詩的である。この人里はなれた集落が、ダー川の新ダムが完成すれば水没するとは残念なことだ。(ライチャウ、2004年9月)

 

R4. 村の小道

この村は、ハノイ市が終わってハタイ省が始まるところに位置する。村人の多くは、バスに乗ってハノイに仕事、物売り、あるいは勉強に行く。コンクリートの家壁、自転車乗り、バナナの木など、見たところ景観は紅河デルタのどこにでもある村のようだが、それでも生活が向上しているのを知ることができる。ここの幼稚園は大きくてきれいだ。村人は明るく上品に笑う。ある人が、うちも昔は普通の米を作っていたが、いまは香り米を作って高く売れるといっていた。(ハノイ市ダイアン村、2002年9月)

 

R3. 網の手入れ

ある年齢をこえた日本人はベトナムで強いノスタルジアを覚えるのではないだろうか。これは都会でも田舎でも同じである。さかなと激しい労働以外には何もない、このような漁村においても、かつて日本もこうだったのではないかという思いに強くかられて感動するのである。現在の日本の海岸線は、そのほとんどがうっとうしいコンクリートとテトラポッドにおおわれてしまったけれども。(タインホア省、2003年7月)

 

R2. 浜辺の昼どき

真夏の太陽は容赦ない。暑すぎて話す気にもものを考える気にもならない。昼時の浜辺は静かで、寄せる波の音だけになる。こういうときは日陰にハンモックを張って昼寝をするのが一番だ。それでも出歩かなければならない女性は、半そでシャツやショートパンツなどは決して身に着けない。真夏の太陽がお肌に及ぼす影響を遮断せねばならないから。これはハノイだろうとタインホアだろうと、同じことである。(タインホア省、2003年7月)

 

R1. 緑の降下

飛行機がノイバイ空港へ着陸する寸前、もし右側に座っていればトヨタ、ホンダ、ヴィグラセラの工場を眼下に見ることができる。もし左側に座っていても嘆くことはない。村落のかたまり、レンガ焼き炉、そしてどこまでも広がる田んぼがみえるから。一枚の田がどれだけ小さいか、よくみてみよう。メコンデルタではこれよりずっと大きい。ハノイの空はたいていかすんでいるからあまり見渡すことができない。でも時にラッキーな日には、デルタを囲む山々がくっきり見えたりする。飛行機に乗るときに真ん中の席だけは避けよう。(ハノイ近郊、2003年6月)