ひと

 

P6. 還剣湖の夕暮れ

夏が終わっても秋はなかなか来ない。昼間はまだ汗が出る暑さだが、日が暮れると少しは涼しい風が吹く。ホアンキエム湖のたそがれは、サイゴンリバー河畔や西湖のラバーズレーンよりロマンチックだと思う。それはバイク進入禁止なのと、カップル同士の間隔が十分とれるからかもしれない。(ハノイ、2004年10月)

 

P5. 生き残りをかけて

ある晴れた日の午後、いつもよりも交通量の少ないハンガイ通りのリトル・ハノイレストラン前で見かけた。赤信号でバイクがみな止まった(最近は止まることが多い)。だがこの自転車の女性はかまわずゆっくりかつ慎重に交差点に入り、そして渡っていった。ハノイで自転車はいつまでサバイブするのだろう。そしてこのひともいつまで車やバイクをよけられるだろう。(ハノイ、2004年10月)

 

P4. ハートはひとつ

Iいろんな途上国へ行ったが、若い女性をあまり街で見かけない国もある。ましてやボーイフレンドと一緒に歩くなど考えられない。だがベトナムではそんな制約はなく、ほっとする。あまりきわどい愛情表現は困るが、若いカップルが適度のしぐさを見せるのはほほえましいものである。自然でもある(私の疑問:なぜ結婚した後もしあわせであり続けるカップルが少ないのか)。(ハノイ、2004年10月)

 

P3. お昼休み

週末の昼食時、うちをでてあてもなく歩いた。ハンブン通りでこのリラックスの形を見た。おばさんがドアフレームにみずからをはめ込んだポジションがすばらしいと思った。望遠レンズでこの構図を記録させていただく。(ハノイ、2004年10月)

 

P2. 新世代ボーイ

最初女性かと思った。よく見ると違った。この人はホアンキエム湖畔に最近できたティーショップで、結構高い「台湾茶」を注文して待っているところである。黄色のJupiter Vがいまの流行、髪の毛の色もファッション雑誌をよく調べないとすぐ時代遅れになる。新世代のお茶をプラスチックのカップから飲み干した彼は、いまひとつの顔をして、走り去っていった。(ハノイ、2004年10月)

 

P1. キュウちゃん

サパのウィークエンド・マーケットで私はキュウちゃんに目をつけられた。他の物売りたちと同様、キュウちゃんは英語が上手で日本語も少ししゃべった。1万5千ドンのムックリ(口琴)を買え買えとひつこく迫る。私の抵抗はまもなく崩れた。かわいい子であることは物売りの必須条件だ。私はただ、彼女が普通の日には学校に行っていることを願うのみである。(サパ、2004年9月)