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リサーチ・プロジェクト

2015/4/1 ~ 2017/3/31

政策科学における数理モデルの役割とモデリング

研究代表者

ビッグデータの時代を迎え、それらの政策立案・検証への活用は喫緊の課題である。データを活用する上で重要な役割を果たすのが(数理)モデルである。本研究は2つの側面からなる。一つは、社会的存在としてのモデルの諸側面を追求すること、そして、もう一つは、新しいモデルやそれに関連する数理・アルゴリズムを追求することである。

現在、統計モデル、経済モデル、天気予報モデル、災害シミュレーションモデル、パターン認識モデル等、多くのモデルが活用されつつある。

これらのモデルについて検討すると、以下のような分類が考えられる:

(1) モデルの真偽が再現性によって検証可能でその有効性が確認されているモデル

(2) モデルの真偽の検証が再現性によっては困難なモデル

(3) 両者の中間のモデル

 例えば、津波シミュレーションや災害時の人間の動き等、モデルによる解析結果等が尤もらしく動画等で表現されることが多く、それだけに結果を信じてしまいがちであるが、それだけからモデルとして価値のあるものであるかどうかの判別は困難である。仮想現実と、実際を反映するモデルとの間は紙一重であり、その境界についてはモデリングの過程にまで立ち入って慎重な吟味が求められよう。例えば、行政判断にモデルによる解析結果を用いる場合に、どのようにしてそれを行うべきであるかという問題は、将来的にはますます重要となってくるであろう。このように、実社会で用いられるモデルの態様について、検討を行い、政策提言に繋げていくことが、本研究の目的の一つである。

 本研究のもう一つの目的は、実問題のモデリングを行い、モデルの数理的側面の解析やモデルを解くアルゴリズムを深化させることである。モデルを扱う数理やアルゴリズムが発展することで、より柔軟なモデリングが実現できる。特に、電力需要や農業への確率計画法の適用とそれを意識した統計モデルの開発、悪条件の凸錐上の線形計画問題に対する正則化法や海洋データ同化にまつわる大規模問題の解法,整数計画による人員配置問題、最適補修計画等の問題に取り組む。

 20世紀が、再現性が高い現象やシステムを対象としたモデリングが発展した「人間がモデルを操作する時代」であったのに対し、21世紀は、数理モデルの方法論がより困難な対象と対峙する、ともすると「モデルに人間が操られる危険性を持った時代」である、といえよう。その中で、モデルのあり方について社会的・数理的両面の総合的立場から検討することは意義のあることと考える。2016年8月に本学で開催される、連続的最適化で世界最大の会議の一つである“International Conference on Continuous Optimization”で成果を発表する予定である。